私の親は、私が小さい頃に離婚した。 17、18歳頃まで、私は写真でしか父親の顔を見た事がない。 そう。17、18歳頃に、実物を一度見た。 家族で食事、の名目で行ったレストランに、何故か座っていた白髪の男性。 見た瞬間ピンと来て、その場で引き返した。 その白髪の後姿を見たきりだ。 あ、じゃあやっぱり顔は写真で見たきりだわ。
一人暮らしの頃、市役所だか区役所だかから封筒が届いた。 内容は
「貴方のお父さんが生活に困っています。 援助してあげてください。 援助をできるにしても、できないにしても、 必ず同封してある封筒で返信してください。」
というもの。 …は?と思った。
何で私がそんな顔も知らない、会った事もない人に毎月お金を送らなければいけないのよ。 冗談じゃない。
「アルバイトという身で金銭的に余裕が無いため、援助できません。」
そう書いて返信した。
その後1年も経たないうちに、父は、飛び降りて死んだ。
正直、ショックは殆ど受けなかったの。 今でも、あくまで他人事のように捉えている。
父は、金銭的な理由により自ら命を絶った。 私があの時お金を援助していれば、彼には違った未来があったのかもしれない。 それは、すぐに頭で分かった。
でも、ショックも罪悪感も無かった。 今も、たぶん、この先も。
……。
私は、どんどん、麻痺、していっている、のだろう、か………。
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