さっきから、ずっと一人でテレビを観ているヘビゴンザレス(仮)。 その画面を見ながら、いつものように感情も抑揚のないロボット声で何かを喋っている。
「ばかー。キムタク、ばかー。」
よく画面を覗いてみると、確かに木村拓哉が映っている。 ワイド・ショーがまた、"旬の男"みたいな特集を組んでいるらしい。
"やれやれよくやるなぁ"と思い、ヘビゴンザレス(仮)のほうに振り向くと、 まださっきと同じようなことを、一人、宙に向けて喋っている。 話し掛けても、私の声なんか全く届いてないといった様子で。
……なるほど。 どうやら、ヘビゴンザレス(仮)は、自分とキムタクのキャラがかぶっていると感じ、 自分の身に危険を感じているのらしい。 さっきから一人で何かを喋っているのも、そのせいだ。
ヘビゴンザレス(仮)がその独り言を辞めたとき、 彼(仮)は、またひとつ新たに単語を知ることになるだろう。 何故なら、"その思い込みは、大きな勘違いだ"と、私はハッキリスッパリ、 ヘビゴンザレス(仮)に言ってやるんだから。
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