2007年01月24日(水) |
映画「不都合な真実」 |
今回は映画ネタ。観てきたのは「不都合な真実」 元アメリカ副大統領、アル・ゴアの地球温暖化についての講演を まとめたドキュメンタリー映画である。
この映画を観て、私だけでなくおそらくは多くの人が漏らす感想は、 「2000年のアメリカ大統領選挙で、もしもジョージ・W・ブッシュでは なく、アル・ゴアが勝っていたら…」というものだろう。
実際フロリダ州の結果によって、アル・ゴアの敗退が決まった訳だけど 全体の得票数では、ジョージ・W・ブッシュを上回っていたにも関わら ず、彼は大統領になることはできなかった。
もっとも、彼が実際に大統領になったとしても、もしかすると暗殺され てしまった可能性だってあるわけで。 (それくらい、一部の偉い人たちには認めたくない事実だと思うし) その場合、私たちはこの映画で描かれる様々な事実を知ることができ なかったかもしれない。
この映画では、私たちが何となくは知っていても、実際はどうなのか よく知らなかった事実が、衝撃的な形で披露されている。
詳しくは、映画を観たときのファースト・インパクトが大事だと思うの で、ここではあまり書かないけれど、私にとって一番衝撃的だったのは 南極大陸の巨大な棚氷(厚い氷のかたまり)の一つが、わずか35日という 短い期間で消えてなくなってしまった、という事実だった。
そのほかの衝撃的で、あまり知らないかもしれない事実については、 できれば作品を観ていただくとして。
この映画について、私の感想を一言でいうなら、「この映画は、観て 知った気になったり、考えるよりも、感じることが大切なんじゃない かな」というものである。
この映画は、ドキュメンタリーとしても面白いし、できれば多くの人 が観たほうがいいと思うけど、絶対観るべき、とまではいわない。
おそらくはこの映画に描かれた内容のいくつかは、少なくとも今後10年 から20年の間には、実際に私たちが直面する問題だと思う。 だからそれは、今知っておくか、それとも将来気づくか、の違いしか ないんだと思うのだ。
この映画の中で語られていて、一番私があまり考えたくないことは、 近い将来、このままだと世界的な水不足と、食糧不足になる可能性が 高い、ということである。
事実、今年はオーストラリアでは天候不良のため、小麦がかつてない ほどの大規模な不作になっているらしい。 日本の輸入小麦の大半はそのオーストラリアからの輸入に頼っている ので、穀物の確保が大変だと言うニュースをちょっと前に読んだ気が する。
健康で文化的な最低限の生活を国民一人一人が享受する権利がある、 というのが基本的人権の大前提だけど、おそらくは20年後、30年後、 私たちの世代がまだ生きている間でも、その今現在での最低限の生活を 満足にするためのコストは、今よりはそうとう高いものになっている 可能性がある。
今現在でも、エネルギーにしろ、食料にしろ、中国や他の国々との 争奪戦は激しいものになっているらしいし。
でも個人的にはだからといって、すぐに人類が滅亡するとも思えない。 おそらくはどんなに困難な状況になって今より生活レベルを落とさなく てはならなくても、人という生命体はしたたかに、生きていくと思う のだ。
でも、その時の生活レベルが、より困難なものになるのかどうかが、 今の私たちの生活に対する行動に現れているのだ、という事をこの作品 は訴えているのだと思う。
もしも、私たちがクーラーの設定温度を1〜2℃上げるだけでも、二酸化 炭素の排出量を下げることができたなら。 その事が将来の私たち、子孫たちの生活がより楽なものになるかどうか に関わるとしたら。
この映画の公式サイトには、今、私たちが簡単にできる二酸化炭素を 下げるための取り組みについて書いてあるページがある。
それらを面倒くさいと思うのか、それとも強制されてしょうがないと 思ってやらされるのか。 それとも、この映画を観てもしも、何かを感じたのなら、多分そういう 自分でもできる簡単な取り組みについて、ちょっとでもやってみようと 思うんじゃないのかな。
この映画が、考えるよりも感じる映画だ、と私が書いたのはそういう 意味なのだ。
地球温暖化については、今までにも問題になることはあっても、 「でも、日本よりもアメリカや中国の二酸化炭素の排出量の方が問題 なんだから、それを何とかすべき」とか、「そんな事いっても、皆生活 レベルを下げられるか、といったら下げられないって」という意見が 強いと思う。
でも人の考え方って、多分変わることができるんだ、と思うんだよね。 それは、今の日本では健康的な生活やダイエットという考え方が当たり 前になっているように。
もちろん、全ての人がダイエットや、健康的な生活を送ろうと思って いるわけではないけれど、そうでない人にとっても、その考え方が あることがあたり前のようになってしまう事はそんなに難しい事では ないと思う。
今、私個人が、電気を余計に使うかどうかが、直接、人類の存亡に 関わっているわけではないかもしれない。でも、ちょっとだけでも 心のどこかに留めておいたなら、それだけでも将来の私たちの生活は 少し楽なものになるかもしれない。
それはカオス理論のバタフライ効果(→Wikipedia)のように、 全体から見たら少数点以下の小さな個々人の些細な変化が、全体に 大きな影響を及ぼすってことが、地球環境ではありえるんじゃないかな と思うし。
この映画はそんな風に、私たちの意識をちょっとだけ変えるきっかけに なるくらいに魅力的な作品だと思うのだ。
いやもちろん、目の前に氷山があることを知らないまま、パーティに 明け暮れていたタイタニック号に乗っていたって別に構わないと思う んですが。
今回見に行ったのは六本木ヒルズにあるTOHOシネマズなんだけど、 毎週日曜日は、この作品が500円で観られるらしいので、 日曜日に予定のない人は見に行ってみてはいかがでしょうか。
余談だけど、以前、惑星物理学者の松井孝典の講演会を見に行った時、 松井教授が次のように言ったことが印象に残っている。
「地球環境の変化のスピードでいうと、化石燃料を使うようになった 19世紀から今までの1年間は、それまでの100万年に相当する」らしい。 すなわち、100年で1億年、19世紀から今までの200年で昔の2億年分、 地球環境は変化しているらしいのだ。
かつて恐竜が生きていられる環境が安定していた時代が2〜3億年だと すると、私たちに残された時間がどれくらいなのか、ちょっとゾッと したのである。
もう一つ余談を書けば今回、この映画のプロモーションで、アル・ゴア が来日して、NEWS23をはじめとして様々な番組に出演していたんだけど その間、日本の政治家で彼にコンタクトをとった人っていたのかな。
まさか誰もいなかった…なんてことはないよねえ? 民主党も、「美しい国より美しい地球(ほし)へ」とかキャッチコピーを 打てば、今年の選挙戦も善戦できるんじゃないかな、と思うんだけど。 そういうセンスってまだないのかな。
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