2005年10月13日(木) |
咎狗(リン×アキラ) |
待ち続けていた日々は、寂寥しか感じ得なかった。 夕方、町中を歩くと、子供達の笑い声が聞こえた。変声期を向かえた直後の少し低く、けれどまだ大人になりきれていない、少年を残した声。
アキラの中で消えることのない笑顔が呼び覚まされた。アキラは頭を振るとその声から逃げるように足早に通り抜ける。
「アキラ?」
名を呼ばれたハッと顔を上げると、心配の色を宿した整った顔がのぞきこんでいる。薄い色の髪が夕日を受け、いっそう色をなくしていた。
「いや、なんでもない」
安心させるように口元に笑みを浮かべると、リンは表情を緩めた。
「今、アキラ、遠くにいた」
「は?」
「心がココになかったよ」
「そんなこと……」
「ないなんて言わせない」
なんでもお見通しだと言わんばかりに、リンはすらりとした手を伸ばし、アキラの肩を己に緩く寄せた。 会えなかった間に、リンはしなやかな成長を遂げていた。 今ではアキラの背を追い越している。少女と見紛うほどの昔の思い出の中にいたアキラは、まだこのリンに慣れなくて、けれどその魂は確かにリンのものだから、心臓が追いつかないときがある。
「心ごと、アキラの側にいたいな」
「いるだろう」
「心もアキラにくっついてたら、さっきみたいに、アキラ1人、遠くにいかせないのに」
「……」
リンを傷つけたいわけではない。淋しそうに笑うのは、アキラを困らせていると思っている証拠だった。
そんな顔をさせたいわけじゃない。
アキラは、そっと口唇を噛んだ。
「違う、俺はもうお前を1人にしない……さっきは、ただ、お前がいなかった日々を思い出してて……」
リンがいない日は、この淋しさをどうやって埋めていたのか思い出せない。ただ激動の時に身をまかせているだけだった。 生きることに必死だった。 けれど、時には生きている意味が、判らなくなりかけたこともあった。 生き続けることができたのは、守り得なかったものへの償いと、もしかしたら、待ち人と再会出来るかもしれないとう希望があったからだ。
「俺も、アキラをもう1人にしないよ」
「……」
「声を殺して泣かないで、俺がずっと側にいるから」
「…リン」
「アキラと一緒に生きていくよ。そのために、帰ってきたんだから」
アキラのところに……その声は宙に消えてた。抱きしめていい?と、一瞬離れた口唇が呟く。
もう抱きしめてるだろうと、悪態をつきながらも、笑みが零れた。
漸く、アキラの時間が流れ始めた。
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はい。咎狗です。リン編です。1度書いて見たかったのです。咎狗。
公道ですよー!!!
アキラとリンの関係は、逆の人もいらっしゃるかもですね。 私は、5年後は確実に下克上があったと確信しています。
また機会があったら、チャレンジしたいですね。咎狗。
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