レプリカントな日々。

2002年09月02日(月) 「ミラー・ダンス」L・M・ビジョルド著 2002年創元SF文庫

 「蘇生への一縷の望を託して低温保管器に収められたマイルズの遺体が行方不明に。一体どこへ消えたのか?マイルズの訃報は故国バラヤーにも伝えられ、彼の皇位継承権はマークが引き継ぐこととなる。だが皇位への忌避観から、マークは全力をあげて遺体の捜索にとりくみ、機密保安庁に先んじて手がかりを得た彼は、傭兵艦隊の面々を率いて出港する。マイルズ奪還はなるのか?」(下巻背表紙より)

 いわゆるワームホール・ネクサスシリーズの一話。
 あまり前の話を覚えてないんですけど・・・道具立てやギミックは最高です。とっても面白いスペオペですね。この方の作品は一作づつ読んでも充分面白いです。
 作者は「人間らしく生きることとは?」と同時に「若者の成長物語」だとしていますけど。どーもなんだか最近の「ヒューゴー賞」に輝いた長編には、ん〜、一風変わったというか、実にアメリカ?らしい(作者が何人かは知りません)精神分析的要素が盛り沢山なのには、少しだけげんなりします。
 宇宙の荒鷲シーフォートシリーズや、紅の勇者オナー・ハリントンシリーズにもそうした極端な「自己犠牲」や「正義」が顔を覗かせていますけど、曖昧な日本で暮らしていると、そうした世界にすんなり入り込めない所があったりしますね。いや、宇宙軍士官もの、皇位争いものは大好きなんですけどね。
 まぁ・・・最新の精神医療の臨床例をふんだんに盛り込んでいるからこそ、それだけ「リアルさ」に共感出来るのかもしれませんんけど。
 時代がどれだけ進んでも、ヒトの持つ悩みは変わらないってことですか。
 遺伝子操作で作られた2メートル40センチの美女戦士タワラ軍曹(鉤爪が自由に出たり引っ込んだりします。しかも18歳食べ頃)なんて設定が当たり前の世界で「お兄ちゃんと比べるなっ」と言われても、ちょっとぴんとこない時もあります。

 印象に残ったのは「本当の富とは、常に生物学的なもの」という言葉ですね。これはまぁ、要するに「愛する人」や「機知・学習」や「信頼」といった「ヒトとの関わり」を指しているようですけど。
 けだし名言ですな。
 っていうか・・・社会学ではふつーに言われている話なんで、さすがそうしたことが充分に敷衍されているアメリカの作家さん(最早決めつけてます)だなぁと感じたりもします。

 オヤジ好みの戦闘シーン、お決まりのどんでん返しがどんでんどんでんしちゃう、とてもスピーディで読み手を飽きさせないストーリー展開と、主人公「たち」の性格が実にミスマッチな一作。
 一点だけ・・・。
 「学校に行くよ、親の七光りだと言われない学歴を手に入れる」というノーテンキな台詞には、作者に「あんた親金持ち?」と聞きたくなりますね。
 学校に行く事自体がスネカジリだってば。







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