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■ 今はただ静かなる祈りを・・・GL
血に塗れた剣を持ち、数多の屍でもって地を埋め尽くす。 それは時に『ヒト』の物であったり、 時に『この世界』の原住生物の物であったり。 夢の中の俺はその時々によって『主』の『御使い』であり、 また『主』に刃を向ける『堕ちたる者』だった。
幼い頃から視えてしまう2つの未来。 1つは『ヒト』として『主』に抗うもの。 もう1つは『主』に従い『ヒト』の敵となるもの・・・。 俺はどちらも選びたくはなかった・・・。
生まれた時から本能として具え持つ『主』への忠誠と敬愛。 育てられたが故に持ってしまった『家族』という物への執着。 どちらも選べず、『ヒト』にも『御使い』にもなれなかった。 辛うじて『ヒト』の側へ留まれたのは『義妹』が 『主』の厭う『グローシアン』であったが為。
『ヒト』である『彼』に出会ったが為・・・。
過ぎ去った過去に『もしも・・・』なんて無意味だけれど・・・。 もしも『義妹』がグローシアンでなかったなら・・・、 もしも『彼』に出会っていなかったなら・・・。 俺は『俺』で有り得たのだろうか・・・。 『俺』でない数多の『同胞』達のように俺もまた 同じものを見、同じものを聞き、同じことを考える 『全にして個、個にして全』なる存在になったのだろうか・・・。
どちらが良かったのかは解らない・・・。 『俺』が『同胞』達より幸せかなんて誰にもわからないのだから。 『同胞』達が『俺』より幸せだったかもしれない。 『主』の御傍にあって、そのご尊顔を仰ぎ、御声を拝聴する。 それは終ぞ己には叶わなかった至福の時・・・。
生まれて始めて生身で拝謁した『主』は 『義妹』を殺そうとしていて。 『主』の姿に喜ぶいともまもなかった。 次に見えたのは決戦の前夜。
バーンシュタイ城取り巻く森で・・・。 『良いのだ』と・・・、『信じた道を行け』と御言葉を頂いた・・・。 『同胞』達と異なり、己の意思を持つ事を良しとして下さった。 『ヒト』も『御方様』もどちらも選べなかったから・・・。 『御方様』に頂いたこの身体も心もお還ししようと御前に立った。
・・・・なのに・・・・。 『御方様』の爪は俺を切り裂く事はなく・・・。 俺の剣が『御方様』を貫いていた・・・。 崩れ逝く『御方様』を前に・・・ ただ立ち尽くしている事しか出来なかった・・・。 そしてただぼんやりと・・・思った・・・。
自分は紛れもなく『ルシファー(堕ちたる者)』であったのだと。
過ぎ去った時間は最早取り戻す事など出来はしない・・・。 この手で滅ぼした『主』と『同胞』達は蘇りはしない・・・。 己が奪った命と知りつつも・・・。
今はただ・・・。 偉大なるこの世界の『神』とその『御使い』の眠りが・・・。 心安らかなものである事を1人静かに祈りを捧げる・・・。 祈るべき『主』なき静かなる祈りを・・・。
2002年07月15日(月)
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