バンソウコウに怪しい気配を感じた女、雨宮であります。 ただのバンソウコウなのに、何か「変だな…」と感じるものを発しているのは不思議なものです。でも錯覚だと言われても、感じたものは感じたんです。こう、もやもやーと変な波を(笑 それはさておき。 同僚のご夫婦は、たまに顔をあわせると「あそこの現場、ずーーっと男の人が覗いてる気配がしたんだよね」とか普通に言います。 止めてください。私、オカルトと幽霊は嫌いですって。 だから「あれはあの家を建てたお爺ちゃんじゃないのかなあ。何をしてるのかなーって感じで興味津々だったし」とか言わないで下さい(涙 怖くて夜中にトイレに行けなくなります。 つくづく幸いだと思うのは、自分がそういう人たちの気配を感じない、鈍感人間だという事であります。 そのご夫婦が「ここ、いるよね」と頷きあっている隣に居ても、何も感じません。見えません。(いや、見たくないから良いんですが) そんな鈍感人間雨宮が、バンソコウの他に風呂場で「何かの気配」を感じたお話をいたしましょう。 もう二年以上前の現場になります。 ハンマードリルを振り回し、どっかんどっかんタイルの壁を落としていた最中、ふと何かを背中に感じたのであります。 そう、何か。 説明の仕様のない何かが背中をもぞもぞとさせるので、ふいと振り向いたのであります。 見えるのは、ラス下と呼ばれるタイル下地の木と、その裏にびっしり詰め込まれた断熱材のグラスウール。別に何の異変もない光景に、気のせいか……と作業に戻ったのですが、やっぱり何かがおかしい。 もう一度振り向いた所で、気づいたのです。 目の前10センチの所で、こっちをじーっと見つめている青大将の存在に。 その時の心境としては、「うへえ」とか「うきゃあ」とかの叫び声なのですが、咄嗟の事で声は出ません。 というか、明らかに蛇のほうも見つかったことに驚いて緊張していやがるのに、こちらも大声を出せなくなってしまったというのが真相でしょうか。 剣を手にしたままにらみ合う剣豪同士のように(笑)、お互いに見つめあったまま数分。そろりと蛇は頭を引っ込め、一目散に壁の裏へと逃げていきました。 ネズミが風呂場にいるんだから、それを捕食する蛇がいることも当然なのですが、いきなり鼻先に奴の顔があったのには驚きました。 というかですね、既にその状態になるまで数時間、どかどかと音を立てて作業をしていたのに、どうして奴は逃げていかなかったのかと。 変な音がして棲家が壊されてるけど、一体何事なんだ、……と青大将が私たちをこっそり観察しに来て、うっかり見つかってしまったとしか考えられないじゃないですか。 そして、その好奇心むんむんの気配を、雨宮が感じ取ってしまったと(笑 そこの旦那さんに蛇がいたと話したら、「絶対捕まえて、退治してくれ」とか必死に訴えられたのも今となっては良い思いでです。 もちろん、その申し出は華麗にスルー致しました。 きっと今でもあのお宅の床下とか壁裏に、青大将殿は潜んでおられる事でしょう。 変な好奇心を発揮して、人間の前に姿を現していなければ、のお話ですが。
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