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2003年09月15日(月) |
真理へ/MUSE"ABSOLUTION" |
レディオヘッドが『OKコンピューター』以降、徹底的にリアルに、目を背けず凝視し暴き続ける世界の真実。信じたくは無いけれど、これが世界のあるがままの姿なんだろう。残酷な現実。そして、俺も、ここを見るあなたも、この「残酷な現実」の物語に参加している。被害者でもあり加害者でもある。
しかし、そう、少なくともここで語られる世界のあるがままの姿は、文明というカテゴリーに限ってのことかもしれない。戦争や経済や犯罪なんてものは人間の所業だ。
大人になってからは、忘れさせられるのか、目をつぶっているのか、考えなくなってしまっているようなこと。考えること自体が正気を逸しているように考えられること。オカルトじみてくること。それは、生とか死であったり、時間という概念であったり、空間であったり、自分の存在以前以後であったり、そういうことだ。最近、飛行機から空を埋め尽くすような星々を見た時や、グランドキャニオンを見た時は、その途方も無さに、そういう日頃考えること無い不思議さが大きく頭をもたげたな。
世界のあるがままの姿の以前に、我々の生きる現実にはこういった途轍も無い謎がある。真理的な何かが。自分が生まれる前はどうだったんだろうか、時間という概念はいつからあるのか、「考える」というのはどういうことなのか、とか考えれば考えるほど当たり前だが不思議で分からなくてどうしようもなくて、笑ってしまうな。
そして、ミューズの話。ぶっちゃけ、3rdアルバム『アブソルーション』は聴けば聴くほど、すごい。驚異的だ。間違いなく最高傑作だし、UKロック、そしてヘヴィーロックの究極。三人の若きアーティストが、その知識、技術、想像力、創造力を結集し3ピースロックの枠組みだけで、何の小細工もなく、先に述べた真理的な何かに手を触れかけている。音楽という暗号を使って、人類史上最大の謎を解こうと着実に進化している。
全編に渡り、オペラとヘヴィーロックとショパンとトランスとバロックとジェフ・バックリィーの強制混血児というか闇鍋のごとく大仰な曲が、否が応にも前二作以上の興奮と感動の涙を余儀なくする。とにかく尋常じゃない。圧倒的な才能で持って、前人未到の域をどんどんと切り開くミューズ、特にマシュー。宇宙的だ。
冷静に聴いてもメロディのレベルも数段アップしている。特にこれは人気曲になるだろう#6の"Falling Away With You"は、ミューズで初めて切なくて泣いてしまった曲だ。この曲はかなり好きだなー。ライヴならば呆然と立ち尽くし涙を垂れ流すしかない切なくデカイ曲。それと#13の"Endlessly"はいいね。新機軸。かなり雰囲気的には重苦しいが踊れる打ち込みのループを使った、それでもエモーション炸裂のヴォーカルは変わらないという変でカッコイイ曲。歌だけ、歌謡曲だ。#2、#3はこれはミューズ節といっていい、ごつさ。静と動のレベルメーターが振り切れまくり。当たり前にこの頭2曲は盛り上がるし、好きだ。
聴いたことが無いこの濃密な世界観と、圧倒的な技術力と、重く高く広がる音塊と、下世話なほどスペーシーな電子音……。これを見事なまでに究極に結び付けて、神のみぞ知るこの世の真理への扉の鍵をまさに今作りあげつつある、ミューズ。
このアルバムは、ちょっととんでもないことになる気がするな。
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