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■ 火原っちvs土浦くんss7 《二度目のファーストキス》
↓↓↓↓↓ 最終話 ↓↓↓↓↓
本当に、なんて思い違いをしていたんだろう。 こんなに幸せそうに俺の腕の中で微笑む彼女を疑ったりして。
「香穂ちゃん。俺も君が大好きだよ」 ぎゅ、と抱き締める腕に力をこめる。もうどこへも行かないように・・・ 「これが二度目の告白。そして・・・」
そっと香穂ちゃんの頬に手を添えると、香穂ちゃんが涙に濡れた長いまつげをふわりと閉じた。 それに応える様に俺も目を閉じて、溢れてくる愛しい気持ちをのせて香穂ちゃんのやさしい唇に自分の唇を軽く重ねる。
「これが二度目のファーストキス、だね」 くすり、と笑いあう。 「二度目の初デートに、二度目の初めてカフェに寄り道。全部なんでも初めからやりなおそうね!」 「はいっ喜んで!」
やっとお互いの気持ちが通じた気がしてこのまま香穂ちゃんを抱き締めていたいなぁって思っていた俺は、背後の音楽室のドアが開く音にびっくりして振り返った。
「あ、すみません!俺・・・何も見てないですよっ」 再度俺を呼びにきたオケ部の後輩が、抱き合う俺たちを見て慌てふためく。 「あの、でも、火原先輩、そろそろ部活に来ていただかないとっ!お待ちしていますから、ごゆっくり!!」 待ってるのにゆっくり、なんてつじつまの合わない事を言い残して、彼は逃げるように音楽室の中に戻っていった。
しばらく呆然としていた腕の中で、香穂ちゃんが恥ずかしさで身じろぐのがわかって俺は彼女を抱き締めていた腕を緩めた。 「じゃ、俺オケ部に行ってくるよ。また明日、ね!」 「えぇ、また明日。オケ部頑張ってくださいね」 まだ少し頬を赤らめている香穂ちゃんが手を振りながら階段を下りるのを見送ってオケ部に顔を出すべく音楽室の中に入った─────
翌朝、俺は昨日と同じいつもより早い電車に乗って登校してきた。 もちろん、香穂ちゃんに誰より早く「おはよう」って言うために。 でも、俺の計画は待ち合わせ場所の交差点が見えてきたところで無残にも夢と消えた。
「・・・土浦」 「おはようございます、火原先輩」 交差点には土浦が立っていたのだ。 俺は昨日の出来事を思いだすと複雑な気持ちで土浦を見た。 土浦はそんな俺の表情を気にする風もなく、にっこり笑うと言葉を続ける。 「昨日、俺は火原先輩に言う事があるっていいましたよね。それを話しに来ました」 言う事・・・昨日は動揺していた所為ではっきりとは覚えていないけど、確かに土浦が帰り際にそんなことを言っていた気がする。 「なに?話してみてよ」 香穂ちゃんを奪ってしまった俺はきっと土浦の話を聞く義務がある。
土浦は予想外に晴れやかな表情で話し始めた。 「俺は昨日、日野にはっきり言われました。火原先輩が好きだから俺の気持ちには応えられないと。予想していたことだけど、やっぱりショックでしたよ。 そして火原先輩に嫉妬しました・・・でも俺、先輩のこと好きなんですよね。日野が好きだっていうのも納得出来るんです」 一旦言葉を切った土浦が正面からしっかり俺を見る。 「だから俺は火原先輩よりもいい男になって日野を振り向かせることにしたんです。手加減はしませんから覚悟しておいてください。」
これは土浦からの本気の挑戦状だった。 確かに土浦は好きな女の子の彼氏を恨むとか、そういうことはしないだろう。正々堂々と挑戦してくる土浦が、俺も好きだし小気味がいい。
「そういうことなら俺だって負けないよ!土浦がいい男になった分だけ俺だって頑張って見せるさ!」 「ふふ。後で泣いたって知りませんからね」 「それはこっちの台詞さ」 そんな会話を交わしていると、不意に土浦が顔を上げて向こうを見た。
「あ、日野が来ましたよ」 「えっ香穂ちゃんが来たの?!」 土浦に言われて後を振り向くと、香穂ちゃんが手を振りながらこちらに来るところだった。 「先に気がついた分、俺が一歩リードですかね?」 「え〜っ!そんなの立ち位置の問題だろ?卑怯だぞっ」
なんだかいつもと違う日常が始まろうとしている。 これからも当たり前だった何かが変わったり、新しい何かが始まったり・・・それでも俺が香穂ちゃんを好きだっていうことだけは変わらないからね?
土浦より早くおはようの挨拶をする為に、俺は香穂ちゃんの方に掛けだした。
↑↑↑↑↑ end ↑↑↑↑↑
はいっやっとタイトルも決まり(苦笑) 7回続いた本作品も完結です〜vv いや〜、この「二度目のファーストキス」が書きたくて 書き始めたんですけどいかがでしたでしょうか??
これまで読んでくださってありがとうございました☆
2004年08月30日(月)
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