きまぐれがき
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2004年04月22日(木) 思い出してしまったじゃないの

「ワインは2万円以上のものじゃないとな」なんていう輩には近寄
りたくない。
ずっと昔、平然とそう言ってのける男がいた。
今でこそ、確かにそうかもしれない(うぅぅ...)とは思うものの当時
学生の分際でそれを言ったのだ。

男の父親は、私でも名前だけは訊いたことがある財界人で、母親
はお妾さんだった。
その男の家に遊びに行くと、盆暮れの時期には玄関の上り口から
廊下にいたるまで贈答品が積み上げられてあり、まっすぐ前を向い
て歩くとこができなかった。
蟹歩きで奥のリビングまで行くと、そこにも贈答品の山が室内の
ほとんどを占めているのにびっくりし、隣のダイニングに入って
みるとそこも同じ光景だったのであきれた。

その中にはワインだってあったのだろう。
贈る側は、受け取る側の名前に見合ったものにしないと、と考える
かもしれない。金額で競おうと思えば、天井知らずのお品物があの
中にあったって不思議ではない世界。
そんな環境で育ったために口がこえたとしても、彼のせいではない。
厭味なことを言うなと攻めるかわりに遠ざかることにしただけで、
あら、ふられたのでしょと言う声は無視。

今は父親も亡くなられ、普通のサラリーマンのあの男。
毎夜高級ワインを飲んでいられるのだろうか。
などという心配を何故せにゃならん。

あの言葉を耳にするたびに、「安ワインだって私が美味しいと感じた
ものを、私は好きなの」と、剥きになって言い返していたのを思い出
したのは、本日デパチカのワイン売り場でだった。
ああ嬉しい、私は迷わずにフリウリのイエルマンの白に手を伸ばす。
須賀敦子が愛してやまなかったトリエステがあり、ダヴィデの故郷で
もあったフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州。



今宵はワインに酔い、ライラックの香りにも酔って、昨日の雨に濡れ
た犬は雑巾のような臭いをふりまき、窓から見える三日月が綺麗で...
....後片付けなんかしないで、ソファーに身を横たえ、変わりゆく月の
様子をただただ眺めていたい。


「安ワイン道場」などというサイトを見つけてしまった。
門下生にしていただこうかしら。


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