伊坂芳太良(PERO)展を見たくて新宿まで出張る。
1970年に42才で死んだ絵師を懐かしいと思う自分の年齢を改めて意識するけど、 さすがに『ビッグコミック』創刊当時の表紙画家だったことは知らなかった。 洋品メーカーのノベルティグッズが代表作でみんなお洒落なんだけど、 中学のころ友だちがこのトランプを持っていて (絵札のキングやクイーンが全員、愛人同伴中)羨ましかったなぁ。
原画を見るのはこれが初めてではないが、やっぱりしみじみ あの線の美しさ(それと赤系インクの色遣い)に浸れるのは原画ならでは。 空間を埋めつくそうとするかのような髪の線と、思いきり白く空虚な顔。 人物の表情、ポーズ、空間の斬り方、衣服に描き込まれる人物。 ニヤリとさせる粋な遊び感覚とエロス。 サイケデリックのまん中にありながら、あらゆる意味で浮世絵的なんだよね。
それと、自画像がフジタみたいとつねづね思っていたんだけど (顔そのものじゃなく、タッチが)モノクロの人体の鉛筆の陰影のつけ方は、 あの艶かしい皮膚感は、間近に見るとまさにフジタを思わせた。 プロレスラーを並べたモノクロの屏風の美しさったらない。 未完なんだが…ジャイアント馬場のところが。あのタッチで完成品を見たかった!
「紳士服のヘリンボーンの線を一本一本描いた」そう、目に焼き付いてしまうあの線。 「一本描き損じると最初からやり直し」それを楽しんでやってた人、 広告会社に勤めながらイラストを憑かれたように描いて、 3倍速で生き急いだ人のスケジュール表が展示品のトリだった。
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