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2003年08月15日(金) NHKSP『映像記録 昭和の戦争と平和』を見ての覚書

NHKスペシャル 映像記録 昭和の戦争と平和
〜カラーフィルムでよみがえる時代の表情〜 2003/08/14放送

 ワタシ的永久保存版のドキュメンタリー。
 本当に録画しておくべきだった。っつーか、DVD出してってカンジなんですが。

 まず、昭和初期の日本が、カラーフィルムで映像記録として残っているという事実に驚かされた。
 しかも、国家主導の「作られた」映像ではなく、一般(よりは、かなり裕福ではあるが…)庶民の生活記録が、個人の手によって残されていたという事実が素晴らしい。

 川べりの満開の桜。色とりどりの着物をまとった若い女性。
 まるで谷崎潤一郎が描く世界そのままに、残された映像の着物の、縹かそれとも二藍か藍系の色の鮮やかさに息を呑む。
 平安時代の重ね色目を見たとき、その斬新さを意外に思ったものだが、昭和初期の日本もまた現代の日本に比べてずいぶんと艶やかだ。
 そして、避暑地での風景であろう。洋装を粋に着こなした一家の、外での団欒風景。
 第一次世界大戦後のつかの間の平和を楽しむ日本の「外国かぶれ」の人達の暮らしがよく分かる。

 しかし、第二次世界大戦がはじまると、民間へのカラーフィルムの規制が行われ、たわいのない生活の記録映像がなくなり、出征などのごく限られた映像が残されるのみとなる。

 ところで、ワタシが一番感心したのは、映像ではなく、出征した兵士にあてられた尋常小学校に通う子供の手紙だ。
 内容はうろ覚えだが、その言葉遣いの美しさに驚いた。
 たしか、10歳になるかならないかの、小学校の低学年の子供の手紙だったと記憶しているのだが、「兵隊さん」に憧れ、尊敬し、思いやる気持ちを、ほんとうに丁寧な美しく優しい、まろやかな言葉で、過不足なく綴っている。
 今、同じ年頃の子供達に手紙を書かせたら、このような立派な文章は、どう逆立ちしても掛けないだろう。
 紹介された手紙は、残されたなかでは文法も構成もとくに立派なものであったとは思うが、そういうことではなくて、言葉そのものが美しいのだ。

 ワタシは基本的に、子供が大きな問題を起こすたびに、マンガやアニメ、ゲームの影響を声高に叫ぶ風潮にかなり嫌気がさしているほうである。
 それでも、現代っ子の大多数が、子供の頃からマンガでしか本を読んだことがないとしたら…と考えて、ぞっとした。

 マンガに出てくる子供は、『ドラゴンボール』の悟空や『名探偵コナン』の江戸川コナンのように、それがどれほど倫理的に正しい子供であっても、現代風の大人と変わらないぞんざいな口調で話をする。
 それこそが「リアル」なのだから、それはそれでよい。

 しかし、宮沢賢治に代表されるような童話に出てくる子供達の言葉は、とても子供らしく優しく美しい。
 こういう言葉で実際に話す子供はかえって不気味だが(こまっしゃくれた子供という気すらする)、それでも、そういう美しい言葉を知っていると知らないとでは、大きく異なるはずだ。
 
 ワタシは自分の子供には、日本人として、こういう綺麗な言葉をたくさん知って欲しいと思う。


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