2003年09月06日(土) |
Roland Petit 『Duke Ellington Ballet』 |
以前から一度持て見たいと思っていた、ローラン・プティのバレエである。今回見た『デュークエリントン・バレエ』は、ローラン・プティのバレエとデュークエリントンのジャズとの、今流行りのコラボレーションとでも言おうか。
実を言うと、2曲目の“In a Sentimental Mood / Mr.Gentle and Mr.Cool”を見た時点で、日本人ダンサーの群舞だけを見渡すと、見るに耐えない。これは、失敗だ。やはり、日本人にはジャズは無理か…と思った。
しかし、何人かの素晴らしいソロ・ダンサーに引っ張られて、最期にはダンサーも観客も皆が一体となって、デューク・エリントンのスウィングに共鳴していた。 私自身がもし、ステップでリズムを刻むことが出来るなら、舞台上に上がって、ともに踊りだしたいくらい、理屈ぬきで、ほんとうに素晴らしく楽しいバレエだった。
ソロ・ダンサーで目を引いたのが、件の“In a Sentimental Mood / Mr.Gentle and Mr.Cool”で満を持して登場した、菊池研くん。(キャスト表には書いてないけど、絶対そう)。 他のダンサーがジャズに乗り切れず、頭の中でカウントしながら踊っているなかで、彼ひとりが実に自然にスウィングし、ほんとうに活き活きと楽しんで踊っているのが感じられた。 彼は、“The Teleasters”でも素晴らしいソロ・ダンスを披露している。まだ若いから、踊ることだけに夢中になっている(というか、テクニックばかり追いかけている?)感があるけれど、先々がほんとうに楽しみなダンサーが登場したと思う。今後、要注意!
そして、楽しみにしてたのは上野水香ちゃん。 彼女の、抜群のプロポーションとテクニック、そしてバランス感覚が存分に発揮された“Solitude”には、溜息ばかり。なにより、表情がとてもチャーミングで、嫌味にならない。“Take the A Train”で皆で踊っていても、しっかり個性が際立っている、ほんとうに華のあるダンサーだと思う。
草刈民代さんは、在るだけで美しい。全身から「私がトップダンサーよ」という貫禄のオーラがかもし出されていて、素晴らしい。「姐さん」ってカンジ(笑)。 それでいてダンスは謙虚。テクニックをまったく見せつけることなく当たり前にこなし、あくまで音楽の一部であるかのような表情をしてしまうところが凄い。
けどけど、私が今回一番感動したのは、ルイジ・ボニーノさんである。 彼こそジャズ、彼こそデューク・エリントン。彼こそプティ、とでも言おうか。この「デューク・エリントン バレエ」を体現しているのが、ルイジ・ボニーノさんなのである。 手の動きもステップも、彼の動きひとつひとつが、ジャズの音でありリズムであり、彼のくるくる変化する目の動きや表情が、プティ・バレエなのだ。 最初から最期まで大活躍のモンゴリアンダンサー、ドゥガラー君のテクニックも素晴らしかったし、カラード三人衆、ロドリゲスさん、アラガオさん、ジョブソンさんの肉体美にもクラクラときたけれども、ルイジ・ボニーノさんなしでこの舞台は成立しない、と言っても過言ではない。
結果として、このバレエは成功だったと思う。 噂にたがわず、洒脱で楽しいバレエでした。ダンサーの皆さんに感謝!!
○牧阿佐美バレエ団/ローラン・プティ振付○ DUKE ELLINGTON BALLET 2003/09/06 13:00 in フェスティバルホール
#01 The Opener #02 In a Sentimental Mood/Mr.Gentle and Mr.Cool #03 Come Sunday #04 Solitude #05 Happy Go Lucky Local #06 Don't Get Around Much Anymore #07 Hi-Fi Fo Fums #08 Mood Indigo/Dancers in Love #09 Sophisticated Lady:Chelsea Bridge/Satin Doll #10 The Telecasters #11 It don't mean a thing (If it ain't got that swing) #12 Caravan #13 Cotton Tail #14 Ad Lib on Nippon #15 Kinda Duskish Rockin'in Rhythm #16 Take the "A" Train
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