無責任賛歌
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2005年08月16日(火) |
対策なんて何もない/『素晴らしき特撮人生』(佐原健二) |
しげのクスリがまた切れたので(飲みすぎだっちゅーの)、病院に回って処方してもらう。 医者からも「飲みすぎですよ」と注意されているのだが、「だって落ち着かんっちゃもん」とすぐに飲み過ぎてしまう。マリリン・モンローみたいになりゃしないかと(スタイルのことではない)心配しているのだが、もう完全にヤク中状態で、クスリが手放せなくなってしまっているのである。飲んでないときは今まで以上に情緒不安定で、部屋の中を意味なくウロウロ歩き回っているのだから全く始末に悪い。 結局、心を落ち着けられるのは自分自身で、自分以外の何かに頼っちゃダメってことか。
合同庁舎の郵便局で、新しく通帳を作る。 局員さんに「お名前の漢字が違うようですが」と言われて、また説明に手間がかかる。前にも日記に書いたが、戸籍係が漢字を書き間違えたおかげて、私の名字は先祖代々の本当の漢字と、戸籍の漢字と、更に父の名字の漢字の三者が全部違ってしまっているのだ。どれに統一にするにしても手間がやたらかかるので、結局放り出したままである。しようがなく、もう一度書き直すが、その訂正印の印鑑の漢字がまた字体が違うことにまでは局員さんは気がつかなかったようだ(笑)。
父のマンションに通帳を届けに行って、やや遅めの朝食を福岡空港国際線のレストランで。 うちと父のとことを往復するときには必ずその横を通るのだが、国際線の中にまでは入ったことがない。見物がてら中を見回るが、周囲を飛び交う言葉は韓国語ばかりだ。ハワイ航路もなくなっちゃうし、韓国線と言い換えたほうがいい感じね。 送迎ロビーで飛行機の離着陸をちょっと見物して、買い物を少し。売ってる品はハンカチやらTシャツやら湯飲みやらマグカップやら扇子やら、全部、浮世絵柄である。まさにエキゾチック・ジャパンってな感じだが、Tシャツの柄で「新撰組の格好をしたポパイ」があったのには笑った。アチラの人には「シンセングミ」は理解可能なのだろうか。更に発見したのは「花魁ベティ・ブープ」(「ベティ・ザ・ゲイシャ」と言った方がいいのか?)。これが実に可愛い。『ロジャー・ラビット』じゃ、「モノクロじゃ仕事ないのよね」とボヤいてたベティさんだけれど、ちゃんと色を塗られて仕事も見つけているのである。よかったよかった。 一階のロビーで小さな海洋写真展などが開かれている。その横にリンドバーグ夫妻が福岡空港まで乗ってきたという飛行機の模型が展示してあって、その時の写真も公開されている。昭和四年のことだそうで、さすがに父もこのころには生まれていない。これはまだあの「リンドバーグ事件」が起きる前だろうか。先日、あの悲しい事件を元にしたクリスティーの小説を映画化した『オリエント急行殺人事件』のBS放送を見たばかりだったので、夫妻の笑顔が何となく寂しげに見えた。
父を博多駅で下ろして、いったん帰宅して一休みする。 何気なくテレビを見ていると、また地震のテロップが流れる。 今度は前々から危険区域とされていた「宮城県沖」である。マグニチュードは7.2、震度は6弱を記録した地域もあるとか。負傷者もかなり出た由である。 印象としては福岡の西方沖地震と同程度のような気がする。新築されたばかりのプールの天井が落下して二十人以上が怪我したとかで、地震に対する防備が福岡よりも進んでいたはずの宮城でこのテイタラクかと思うと、本気で国の地震対策なんて口だけじゃないかという気がしてくる。 『地震列島』って映画のタイトルがフィクションじゃなくて切実感を伴って聞こえる状況になってしまっている。しかしもっと悲しいのは、地震対策がマトモに行われない行政の現状である。『地震無防備列島』と言い直した方がいいんじゃないのか。我々の税金は、ホント、どこにどう使われてるんだろうかね。
天神の福家書店で京都帰りのよしひと嬢と待ち合わせ。 ゲームの攻略本を探しているということで、ジュンク堂、紀伊国屋と何軒か本屋を回るが、売り切れでないとのこと。 喫茶店でひと休憩でも、とスターバックスなどを回って見るがどこも満席。結局、天神コアの七階レストラン街まで登って、そこの喫茶店でお土産交換などする。 よしひと嬢はそれまで「アニメイト」や「まんだらけ」などを回っていたそうだが、かなり「いたたまれなかった」そうな。もうどんな客が群れ集っているのか目に見えるようであるが、私などが足を踏み入れた日には違和感ありまくりであろう。それでも平気で入り込むことあるけどね(笑)。
佐原健二『素晴らしき特撮人生』(小学館)。 表紙は『ウルトラQ』の主演お三方、佐原健二・桜井浩子・西條康彦のスチール写真。このカバーを外すと、今度は“現在の”お三方が全く同じポーズで……。考えてみれば、『ウルトラQ』に携わったスタッフ・キャストの方々の多くが鬼籍に入られた中で、主演の三人がまだ活躍して(西條さんは一応、役者を引退なされているけど)いらっしゃるというのは本当に嬉しい。佐原さんは母と同い年だ。 実を言うと、『ウルトラQ』で佐原さんが演じた「万城目淳」というキャラクターはそれほど好きではなかった。子供の目にはあまりにもヒーロー然としていて「ええかっこしい」に見えたし、星川航空のパイロットとという設定はまだしも、「SF作家」というのがどうにも似合わないような気がしていたのだ。本書を読んで、「実は平田昭彦がこの役をやりたがっていた」というのを知って、「ああ、平田さんが演じていてくれたら!」と思ってしまったのは、もちろん私が平田昭彦絶対主義者であるからである。冷静に考えて見れば、クールさが魅力の平田さんが万城目を演じるよりも、佐原さんの方がよりベターなキャストであるということは理解できるのだが。 「万城目」が嫌いだからと言って、佐原健二さんが嫌いなわけではない。何と言っても『モスラ対ゴジラ』の虎畑次郎はゴジラ映画史上でも、最も印象的な悪役の一人だろう。この役を演じるために「本物の不動産屋に役作りのためという目的を隠して会った」というのだから、その役者魂には感動する。虎畑のあの人を小馬鹿にしたようなせせら笑い、あれは「ナマ不動産屋」の表情だったのだなあ。全ての不動産屋さんが虎畑みたいなカネの亡者だというわけでもなかろうが、いかにも「らしい」のは佐原さんの演技力である。 しかし、佐原さんが虎畑を演じてくれていなかったら、私は多分、長いこと佐原さんの演技力に気がつかないままだったろう。佐原さんは、主役から脇に回るときに内心忸怩たるものがあり、恩師である本多猪四郎監督に相談したというが、「ちっぽけなプライドは捨てろ」の言葉に勇気付けられたと言う。実際、主役にこだわって、佐原さんが役者を辞めてしまっていたら、たとえ『ウルトラQ』があったとしても、長く特撮ファンの間で佐原さんが愛され続けることはなかったのではなかろうか。佐原さんが万城目淳から虎畑次郎までを演じられた「役者」であったからこそ、「ゴジラ映画出演最多俳優」にもなれたと思うのである。 本書には当然のごとく、数多くの特撮映画・ドラマに関わった人々が登場してくる。そのエピソードをとても全部は紹介できないが、「ウルトラマンの生みの親」金城哲夫についての次のエピソードだけは紹介しておきたい。 ゴジラ映画がヒットを飛ばしていても、東宝では「ゲテモノ映画なんて」と陰口を叩いているやつの方が実際には幅を利かせていたそうである。もちろん佐原さんはそんな腐れた人間ではない。『ウルトラQ』のロケ中に、金城さんは佐原さんにこう言ったという。 「佐原さんはやっぱり研究熱心ですね。(中略)私は、特撮が本当に心底好きでしかも手を抜かない俳優さんは、私なりに見抜けるつもりでいますよ」 昔も今も、特撮に偏見を持っている人間はいくらでもいる。最新作の『ゴジラ FINAL WARS』でも、「ちょっとこいつは」という役者がアレとかコレとかいなかっただろうか? ある意味、映画そのものが「特撮」であることを理解できない人間は、役者も、監督も、いや、ファンである資格すらないと思うが、どうだろうか。 東宝で、「怪獣映画に出ようとしなかった主演級の役者」は、たいていが映画界から姿を消して行ったと思う。役者とは何か、答えはももう出ているのだ。
2004年08月16日(月) 老けてるけどトシヨリってほどじゃないぞ。 2003年08月16日(土) 危険な予感/『空想科学大戦1』(柳田理科雄・筆吉純一郎) 2002年08月16日(金) ドリンクバーの果てに/『フラッシュ!奇面組』1巻(新沢基栄)/『永遠のグレイス』(川崎郷太・伊藤伸平)ほか 2001年08月16日(木) 代打日記 2000年08月16日(水) 橘外男&中川信夫ワンダーランド/映画『女吸血鬼』ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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