無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年08月30日(火) 帰りなん、いざふるさとへ/映画『地球の危機』

 こないだから父と相談していたことなのだが、今度の正月、家族三人で台湾に旅行しないかという話がまとまりかけていた。台湾は母の故郷である。
 最近、父から聞いた話なのだが、母は生前、台湾人のお客さんを案内人に、私たちと台湾旅行を計画していたそうなのである。
 まあ「台湾に行こう」という話はことあるごとにしょっちゅう出ていたので(たいていはスケジュールが合わずに頓挫する)、そういうこともあったんだろうなあと思いはするが、最近になって父が熱心に話を進め始めたのは、寄る年波で今決行しないと、そろそろ体が動かなくなるんじゃないかという不安が生じ始めているからだろう。
 そういうわけで、先日から頻繁に「パスポートを取れ」とせっつかれていた。全くせっかちなジイサンだと少しばかり閉口していたのだが、今日、いきなり電話がかかってきて、何だか消沈した声で「もう取らんでいいぞ」といきなり正反対のことを言い出した。
 「どうしたん?」
 こないだまであれだけ熱心だったのだから、私が疑問を抱いて思わずそう口にしたのも当然のことだと思っていただきたい。それに対する父の答えはこうである。
 「正月は運賃が高い」
 何か脱力しちゃったけど、それなら時期をずらせばいいだけのこっちゃないのかな。二月、三月なら安くなるだろうに。

 もののついでのように「メシまだならどこかで食べんや?」と誘われる。何だか父も元気がないようなので、誘いに乗ってダイヤモンドシティの居酒屋で焼き鳥など。
 しげと私、二人揃って『シベ超』のTシャツを着て行ったので、「何やそれ」と笑われる。『シベ超5』の映画を見に行って水野晴郎さんからサインを貰ったことや、「万里の長城ジェットコースター」の話をすると、またまた笑われてしまう。別に笑わなくてもいいと思うが。
 「なんでそんな映画作るんかなあ」
 「まあ、ちょっとヘンなひとだからね」
 「お前、水野さんと何か話ばしたとや」
 「本人を前に『ヘンな映画でした』なんて言えんよ。『もっと映画作ってください』って言ったよ」
 本当はもうかなりなお年であるし、ちょっとボケちゃってるところもあると思うのだが、それを言い出すと父もたいして年は違わないので気を悪くするかもなあと思って控えた。

 そのあと、父もダイヤモンドシティに来るのは久しぶりだと言うので、しばらく中を見て歩く。「新しい靴がほしい」と言うので、靴屋を覗いているとき、尿意を催した。
 「三分で戻ってくるからちょっと待ってて」と言って、父も「おう」と返事をしてくれたので、安心して戻ってきてみると、件の靴屋には父としげの影も形もない。
 慌てて携帯で連絡を取ると、「ジャスコにいるよ」。
 せっかちが二人揃っていると、三分も待っていてくれないのである。
 父の靴を買って、「フタバ図書」で映画『リンダリンダリンダ』のサントラCDを買って帰る。

 父をマンションまで送った別れ際に、「セブンイレブン」でシールを集めて手に入れた「スヌーピーの絵皿」&「スープ皿」を渡す。
 父のマンションの前にもセブンイレブンはあるので、このキャンペーンのことは知っていて、「よく集めたなあ」と感心していたが、しげが自分では全然料理を作らずにコンビニ弁当ばかり食っているので、よく集めたどころかウチには絵皿、スープ皿それぞれ六枚ずつあることはさすがに言えなかったのである。
 こんなんでしげがダイエットできるわきゃないんだよな。
 
 しげ、帰りの車の中で、「今日の父ちゃんどうしちゃったのかな」と、元気のない父を随分心配する。
 「意地っ張りなとこがなくなってきたなあ。けどそれはオレたちにであって、姉ちゃんに対してはまだかなり頑固だと思うよ」
 今日も、今の店を潰して事務所に貸そうかとか言っているのである。
 姉の仕事ぶりにも不満があるようで、しきりと「いい加減な仕事ばかりしようけんなあ」とため息をついているのだが、父の目から見ればどんな仕事だって手抜きに見えるだろう。姉が「お客さんに声をかけられても挨拶もしない」と言っているのはどこまで本当なのか。
 でも、「叱っても誉めはしない」というのが昔の職人というものなのだから、姉にも父の愚痴にもちっとだけ堪えてほしいとは思う。これ以上、姉が床屋としての腕を上げることが至難であることは承知の上でそう思う。私は姉から店を取り上げるつもりがないことを伝えているのだから。


 帰宅したらちょうど「24時間テレビ」で丸山弁護士の100キロマラソンの特番が放映されていた。24時間テレビを見るたびに「結局、日本人てのはこういう『ハレ』の舞台を用意してやらなきゃ他人のことなんて考えられない民族なんだなあ」と悲しくなってしまうので、あまり熱心には見ない。
 けれどもさすがに今回の丸山さんの走りにはいやでも注目させられてしまった。なんでこの人が、60も間近になって走らなければならないのか、理由が見えない。理由が分からないのだけれども、やはり満身創痍の丸山さんが完走して武道館のテープを切ったとき、私は涙ぐんでしまっていたのである。この涙は何の涙か。私は何に感動してしまっていると言うのか。
 間寛平に始まって、もう十年以上続いているこの100キロマラソンであるが、実のところこれがどうして募金に繋がるのか、意味は不明である。毎回のランナーはただ苦しい思いをして走っているだけである。それが感動を呼ぶのは、やっぱり「走る」という行為そのものに、「意味はなくとも感動してしまう何か」があると判断するしかないのではなかろうか。
 『うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー』で、あたるは世界を変えるために「意味もなく」走った。『オトナ帝国の野望』で、しんちゃんは町を救えるのかどうか分からないままにタワーを駆け上った。全て、「意味なんてない」のである。
 「無償の愛」ってのはつまりは「理屈なんてどうだっていい、ともかくオレは(私は)こいつを助けたいんだ」という気にさせたくなるということなんだろう。
 亡母が昔言っていた台詞も思い出した。
 「辛いことがあったら走れ」
 意味なく走ることが、意味なく生まれた人間の生き方としては一番正しいのかもしれない。 


 WOWOWで録画した映画『地球の危機』。
 タイトルはありふれているけれども、パニック映画で知られたアーウィン・アレン製作の往年の特撮テレビシリーズ『原子力潜水艦シービュー号』の元になったのがこの映画。映画版もテレビ版も、原タイトルは『Voyage to the Bottom of the Sea』。直訳すれば「海の底への航海」となるところだけれど、これはぜひ「深海探検」と訳してほしかったものだ。『海底二万哩』のジュール・ヴェルヌへのオマージュがこれだけ明白な映画なんだから(映画中にもヴェルヌへの言及がある)。まあ、一昔前のSF映画なんて、こんな安っぽい味方しかされちゃいなかったんだよな。
 テレビシリーズは四十以上の特撮オタクには有名な番組だけれども、これももう再放送すら見てない若い人の方が圧倒的に多くなっちゃったから、一応の説明が必要になってしまっている。海洋調査研究所のネルソン提督が建設した原潜シービュー号とそのクルーが、世界の危機を聞きつけると公海であろうとなかろうとどこへでも出向いて行って事件を無理やり解決してしまうという、海版『サンダーバード』みたいな番組。さすがに40年前となると、私もディテールは覚えてない。映画版も確かテレビで見たはずだが、もう全然忘れちまってた。

 流星雨の影響で、突如燃え始めたヴァン・アレン帯。地球は一日に1.1度ずつ上昇を始める。79度を越えた時、地球は灼熱の星と化してしまうのだ。急遽招集された国際会議で、ズッコ博士は自然消火するから放置すべきだと主張する。
 ネルソン提督は、核ミサイルでヴァン・アレン帯自体を破壊しないと、この現象は収まらないと反論し、大統領の承認も得ないまま、作戦を決行するために、シービュー号をマイアミに向かわせる。
 しかし、肝心のシービュー号のクルーも決して一枚岩でなく、世界の滅亡が刻一刻と近づく中、ついに反乱分子がシービュー号の破壊工作を始めるのだった……。

 とまあ、粗筋だけを書くと何だか凄くシリアスな映画っぽいけれども、ムカシのSFは(今も一部はそうだが)ともかく演出過剰で、深海に機雷原はあるわ大イカは出てくるわ大ダコは出てくるわのサービスサービスで、あっという間にB級SFの匂いがプンプンと漂ってくるのであった。
 そもそも、流星雨なんてしょっちゅう地球に降り注いでいるものだが、その程度のことで地球が滅亡の危機に立たされるんじゃあ、地球も溜まったものじゃない。
 しかも、この灼熱のせいで、北極の氷が割れて海に落ちるのだが、その氷が海の底に沈んでいくのである! ……SFじゃねえよ、こんなもん。この映画のノベライズはシオドア・スタージョンが担当しているのだが、こんなシーンがあったんだろうか?
 ほかにもなんじゃこりゃってなシーンはいくらでもあるのだが、まあSFがマトモな映画ファンに相手にされるようになるには、ほんのもう少しあと、『ミクロの決死圏』やら『猿の惑星』やら『2001年宇宙の旅』が出るのを待たねばならないのである。

2004年08月30日(月) 『華氏911』の真価
2003年08月30日(土) ネットではみんな「役者」だ/DVD『恋人よ帰れ!わが胸に』/映画『ゲロッパ!』
2001年08月30日(木) 性教育マンガ(* ̄∇ ̄*)/『フリクリ』2巻(GAINAX・ウエダハジメ)ほか
2000年08月30日(水) ○○につける薬がほしい……/映画『蝶々失踪事件』ほか



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