無責任賛歌
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2005年09月01日(木) |
シメキリギリギリ/映画『奥さまは魔女』 |
今度の舞台の脚本、しげから言い渡されていたシメキリは昨日だったのだが、まだ殆ど進んでいない。調べものがかなりあって、あれこれ本ばかり読んでるんで進まないのだが、まあそんなのは言い訳である。 「書き上がんないなら中止するよ!」のしげの怒声に、「一週間待って」と頭を下げる。毎度毎度、シメキリ過ぎなきゃエンジン掛からないのは自分でも困ったものだとは思うけれども、煮詰まったところから絞りカスのようにして出て来るアイデアほどいいものだったりするものなので、もうチョイ、忍耐して暖かく見つめておいていただきたいのである。
「クールビズ」の浸透度が大企業の八割以上を占めたとか。 うちの職場も一応は大企業と言えなくもないので、この夏ずっと、あっちこっちの壁に「9月30日まではノーネクタイ、ノースーツで」と貼り紙がしてあったのだが、何分これまでは全く逆に「必ずスーツにネクタイを」だったので、この180度の大転換にはみんないささかならず戸惑ったのである。私も言われて一週間くらいは切り替えていいものかどうか迷ってしまった。「罠ではないのか」とか、疑心暗鬼になってしまったのである(被害妄想みたいだが、騙し打ちや裏切りはうちの業界では日常茶飯事である)。 その結果、職場内は、従来通りの夏でもスーツにネクタイでビシッとした人がいるかと思えば、開襟シャツにノーネクタイのラフな人までいるという、よく言えば各人の考え方が一目瞭然で個性的な、悪く言えば統一感のない状態になってしまった。たかが衣服のことなんだけれども、これで「派閥」関係が部外者にすら見えるようになったってのが大笑い。「ああ、ここんとこ、内紛が激しいんだな」ってバレちゃってるのね。 まあ、私もすぐにネクタイを外せなかったのは、「即外し」の連中と同じ穴の狢だと思われるのがちょっとヤだったんである。かなり全体に広がってくれたおかげでこちらもようやく外せたんだけれども。 でまあ、次の課題は、一応9月30日までノーネクタイでいいってことにはなってるんだけれども、その「どれくらい前の段階で」ネクタイに戻すか、そのタイミングなのである。 あー、大企業ってこんなつまんねえことにも気を遣わなきゃなんねえから腹立つ。給料高くねえのに。
しげの好きな役者さん、劇団ダンダンブエノを主宰されている近藤芳正さんが、NTTのフレッツ光・プレミアムのCMに出演している。「近藤芳正って誰?」と思われる方もいらっしゃるだろうが、長澤“小美人の片割れ(南ちゃんなんて言ってやるもんか)”まさみを相手に、光ブロードバンドの宣伝マンを演じている、ぺたっとした顔にちょんちょんちょんと目鼻がくっついた印象のあるあのオジサンである(歳は私より一つ上の43歳)。 しげはこれまで、「好きな役者さんは?」と聞かれたときに「近藤芳正さんとか」と答えると決まって「誰それ?」と返されてしまっていた。『ウォーターボーイズ』や『世界の中心で、愛をさけぶ』とか超有名な映画にも出演していらっしゃるのだが、これがまた、「ほら、あの真鍋かおりの旦那さんを演じた」とか「『セカチュー』で先生役やってた」とか言って説明しても、見てる人ですら覚えてはいらっしゃらないのだ。一番出番が多い映画って言ったらやっぱり三谷幸喜の『ラヂオの時間』の鈴木京香の旦那さん役になるのかなあ。……なんか、気弱な旦那さんって役柄が多いね。 でも、東京サンシャインボーイズに客演されていた時代から、誠実で善良な人間を演じたかと思えば、いい加減で人を煙に巻く傲慢な人間、ひがみ根性丸出しの卑屈な人間など、幅広い役をずっとこなされていた方で、読売演劇大賞を受賞した舞台版『笑の大学』では脚本家・椿一を演じ、三谷幸喜さんにとっては盟友と言ってよいほどなのだが、それでもまだまだ一般的な知名度は決して高くはない。 このCMでブレイクするかどうかは分からないけれども、「ホラ、長澤まさみと一緒に出てる」と言えば少しは通りがよくなったかもしれない。三谷さんの新作映画『THE有頂天ホテル』にも当然出演するので、ご注目いただきたい。
毎月一日の映画の日なので、しげと待ち合わせてキャナルシティで映画『奥さまは魔女』。 先にフードコートで軽くヤキソバを食って、福家書店で何冊か本を買ったあと、映画館に向かう。 先週の興行収入が三位と言うから、そんなにヒットしてるんか、席は空いてるんかいな、とちょっと心配していたが、入場してみるとそこそこの入りで、混んでいるというほどでもなかった。たいていの客は『室井慎次』の方に行ってるんだろう。どっちもお客さんの評判はあまり芳しくないらしいが、『奥さま』の場合、リメイクものだってことで既にハンデがあるのである。多少は大目に見てやろうかって気分で見たおかげで、腹が立つとまでには至らなかったが、確かにもちっと工夫がほしかったな、という印象ではある。 基本設定は「この手があったか!」と膝を打ちたくなるくらい、いいアイデアだと思うんである。普通に『奥様は魔女』をリメイクするんじゃなくて、「『奥様は魔女』をリメイクしようとしたら、ホンモノの魔女をキャスティングしちゃった!」という意外性。つまり、劇中劇のドラマと、そのバックステージが二重に楽しめるという、まあよくある手法ではあるんだが、「リメイクもので」これをやったってのはあまり例がない。 それもサマンサ役がまた、シティボーイズの皆様方も憧れの(っつってもきたろうさんと斉木さんだが)演技派、ニコール・キッドマンだというのだから、ちょっとこれは期待したくもなるじゃないのよ。 ところがねえ、これがなかなか面白い方向に転がっていかないんですよ。まず、主演のニコールにどうしても愛嬌が足りないのがドラマを今ひとつハジけさせてくれない。唯一無二のサマンサ、エリザベス・モンゴメリーと比べるのは気の毒ではあるのだが、ニコールがどんなに表情を豊かにしようとしても、「キョトンとした顔」「しかめっ面」「ツンとした顔」「慌てふためく顔」「ホッとした顔」、その一つ一つがエリザベスに比べて魅力に欠ける。 いや、そもそもサマンサがそんな顔をするのは彼女の回りに様々なトラブルが生じるせいなのだが、今回、ニコール演じるイザベルは、ほとんどトラブルというほどのトラブルには見舞われない。たとえバックステージものだとしても、「トラブルのない『奥さまは魔女』」など、リメイクの価値があると言えるだろうか? イザベルの父、ナイジェルを演じるのはマイケル・ケインである。サマンサの父親、モリースが、人間との結婚に激怒してダーリンを散々な目に合わせたことを思い出せる往年のファンならば、このナイジェルが、イザベルを口説いたジャックに何らかの鉄槌を下すんじゃないかと期待するだろう。ところがナイジェル、エンドラ役のアイリス(シャーリー・マクレーン!)に惚れちゃってイザベルのことなんか気にもかけなくなってしまう。……何のために出てきたんだこのオヤジ、っつーか、役者の使い方間違ってるよ! ナイジェルの代わりとばかりに、オリジナル版でもボケた魔法で人気のあったクララおばさんがジャックに呪いをかけるのだが、これが効き過ぎて、ジャックがイザベルにぞっこんになっちゃうというのも、「クララおばさんにしては」地味な失敗である。どうしてジャックを犬にするかワニにするか皇帝ペンギンするかくらいのことをしなかったのかね。魔法の面白さがまるで伝わってこないのである。 ジャック役のウィル・フェレルも熱演はしているのだが、もともと落ち目のスター役者という設定で、普段からハイテンションで過剰な行動を取っているから、魔法にかけられて急にロマンス野郎に変身したりしても、たいしてその落差の面白さが出ないのである。普段はマジメなサラリーマンが奇妙な行動を取ったりするからおかしいのに、ダーリン役の人間を元からエキセントリックなキャラに設定してどうする。監督も役者も、ギャグのコツってものがまるで理解できていないのだ。 人物設定の分かりにくさも随所でドラマを停滞させてしまう。オリジナル『奥さまは魔女』はこの映画の中でもあくまでドラマだから、サマンサやダーリンは当然、架空の人物である。ところがクララおばさんやアーサーおじさん、隣のグラディスさんとかはこの映画の中でも実在人物なのだ! これはどう考えればいいんだろうかね?(多分、監督は何も考えていない) も一つ文句を付けると、あまりに原語と違ってしまっている戸田奈津子の翻訳。シットコムを「テレビショー」と訳すのはあんまりだ。撮影中に、観客席が映し出されるから勘違いしたんだろうけれども、あれが「笑い屋さん」でサクラだってこと、彼女は知らないんだろうか? 単にボケてきただけかもって気もする。劇中で引き合いに出された『かわいい魔女ジニー』を「宇宙飛行士の出るやつ」なんてテキトーに訳してるのも何なんだか(ちゃんと「ジニー」と発音してるのに!)。ほかにも意味がよく分からない訳が目白押しで、この映画がつまんなく感じた最大の原因は字幕にあるかもしれない(吹替版はオリジナルを担当した北浜晴子、中村正諸氏がご出演とのこと。こっちを見ればよかったかなあ)。 シャーリー・マクレーンが時々、オリジナル・エンドラを演じたアグネス・ムーアヘッドに似て見えるあたりがせめてものこの映画のよさだと言えるだろうか。
2004年09月01日(水) 『華氏911』余燼 2003年09月01日(月) 「じゃないですか」って言ってる人が多いじゃないですか/映画『用心棒』/『呪恩2』(清水崇・MEIMU)ほか 2001年09月01日(土) 加藤夏季補完計画(笑)/『スペオペ宙学』(永井豪)ほか 2000年09月01日(金) 食って寝るだけの毎日も今日まで/ドラマ『横溝正史シリーズ・本陣殺人事件』ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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