無責任賛歌
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2005年09月04日(日) |
ヒビキヒビキヒビキ/『劇場版 仮面ライダーヒビキ(響鬼)と7人の戦鬼』 |
『仮面ライダー響鬼』三十之巻「鍛える予感」。 久方ぶりの井上敏樹脚本ということで、世間のオタクがこぞって不安感を表明していたが、見てみて、これまでのまったりした雰囲気とのあまりの変わりように驚きである。「こんなのヒビキじゃない!」って驚愕・呆然・絶叫・失神・失禁したオタクは全国で推定57,463人はいると思われる。早速カトウ君も過剰反応してた(笑)。あっちこっちのオタクサイトも、今日明日はさぞや喧しいことであろう。 私は井上敏樹にはそんなに反感は持ってなくて、『うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー』のころからどっちかっって言うと「自分の勝手な思い入れだけで脚本書いてるみたいだけど、ああいうのもアリでいいんじゃない?」というスタンスだったので、今回も違和感はあったが、別に怒るほどのことはない。 まあねー、確かに新登場の桐矢京介(中村優一)って、金持ちで語学はできるわマンガは上手いわ(でも少女マンガ)、でもマザコンで運痴という弱点もあってって、まるで面堂終太郎みたいなやつで、こんな「いかにも」なキャラを脈絡もなく投入してくりゃ、ヒビキファンの反発・非難・憤慨・怨嗟・呪詛は必至だろう。 けれども、明日夢くんがヒビキの弟子になるためには、もちっと「後押し」してくれるキャラが必要になる。もちろん、これまでにも何度かそういう機会はあったものの、「たとえ鬼の弟子にならなくても、明日夢君が自分の道を一歩一歩進んで行くことを見守る」という立場をヒビキが取ったことによって、基本的には明日夢君は弟子になる必然性が失われてしまった。作品カラーもそのおかげでより「まったり感」が強まることになっている、というよりは、もうこれで「いつ最終回になっても構わない」状況ができあがってしまったのだ。まだ2クールも残っているというのに。 即ち『響鬼』はメインライターたちが意図したのかどうかは分からないが、「最終回用の台詞」をヒビキに語らせてしまったために、ドラマを放棄する結果になってしまっているのである。もしこれがメインライターたちの「失敗」であるとすれば、いささか強引な手段に出てでも、これまでの路線を壊す必然性が生じる。その意味では、井上敏樹の参入は決して間違いだとは言いきれない。あいつ以外に「終わっちゃった物語を再開させる」なんて力業&泥被りのできるやつがおるかいな。「『ヤマト』の続編作れ」と言われたようなもんだ。 明日夢君は前話までで、「自分の道」を確定させてしまっている。これを「崩す」ためには、「君って、つまらないやつだな」と決め付けるキャラが必要になったということである。生半可なキャラでは、ヒビキの薫陶を得た明日夢君の心は揺るがない。リアルに明日夢君の心を「崩す」のなら、「ヒビキよりも大人」なキャラを投入し、説得力のあるセリフを吐かせなければならなくなるが、それはヒビキを「小粒」に見せ、ヒビキと明日夢君の関係そのものを破壊しかねないのでできることではない。桐矢君のような、あくまで「明日夢君のライバル」に位置する人物が必要になるのである。 まあ、あんなエキセントリックなキャラの導入で明日夢君を動揺させるのは、強引過ぎて決して最善の策とは言えないのだが、仕方のない面はあったのだ。そもそも話を終わらせちゃった大石真司がよくないとも言えるのだし。 早い話が、「展開がどうにもモタモタしてるから、一気に行っちゃってくれ」という要請が、テレビ局か石森プロかから、東映スタッフに対してあったのではないかということなのだ。だって、そうとでも考えないと、いくらこれまで『ライダー』シリーズでの実績があるとは言え、2クール過ぎていきなりメインライター以外の脚本家をぶち込んでくる謂れがない。要するにテコ入れである。 穿った見方だが、もしかしたら大石真司は、井上敏樹の参入を知って、あえて29話までで「最終回」を書いてしまったのだろうか。ウラ事情は全く分からないので、このあたりのことは憶測でしかないのだが。 『響鬼』、結構人気出てると思ってたんだけど、視聴率あんましよくないんかな。『NEWTYPE』が月間視聴率を掲載しなくなったんで、そのへんのところがどうもよく分からんのだ。 今回のエピソードに対してオタクが反発する気持ちは分からんでもないのだが、突拍子もない展開という意味では、第一話を初めて見たときと、印象はたいして変わらないのである。「音撃戦士」の設定に視聴者が慣れてしまったために、ここしばらくは「まったり」と感じてしまっているのだが、相変わらずこれは「ヘンな」ドラマだ。そのヘンな話にうまく乗せられて油断している心の間隙に、リアルな人生の指針がぽこっと嵌め込まれていく。だから感動が生まれる。そこが面白い。 オタクはすぐに冷静さを失うから困ったものなのだが、もともと「こんなの『仮面ライダー』じゃない」シリーズの中で、更に「鬼っ子」である『響鬼』について、また「こんなの『響鬼』じゃない」と騒ぐことが、あまり意味のあることのようには思えない。どうやらこれで「明日夢君弟子入り路線」が引かれそうな感じだから、あまり文句付けずに今後の展開を見守るのがいいんとちゃうかね。 ああ、でもヒビキが「昨日から始まった面白い映画」の宣伝をしてたのはふざけすぎ(笑)。
台本を書こうと机に向かうが、遅々として進まず。 気分転換にテレビを見たりDVDを見たり。『アッコにおまかせ』の総集編など。 こういうバラエティ番組に出たときのゲストって、どうしてイヤなやつにしか見えないのかね。もしかしたらもとからイヤなやつなのかもしれないけれど。
G2プロデュースからDVDが届いたので、『おじいちゃんの夏』2002年初演版を見る。青山円形劇場での収録なので、北九州芸術劇場での再演のときのように、幽霊を舞台上に台移動で見せる手段は使えないので、幽霊はみんな歩いてくる(笑)。 学歴自慢のギャグで、北九州版では「西南学院大学」と「東大」のどっちが上か、という比較であったが、東京版では「青山学院大学」と「東大」になっている。要するに「青学青学と威張るじゃないよ、東大出には敵いやせぬ」というギャグなのだが、北九州でこのギャグがあまり利かなかったのは無理からぬ話である。「西南」って、決して悪い大学じゃないが、かと言って威張れるほどの大学でもないし、東大と比較して笑うには中途半端なんである。それに福岡ならともかく北九州じゃ地元とは言えないし。「北九大」か「九大」にした方がよかったと思うが、こっちの事情に詳しいスタッフがいなかったんだろう。 キャストは初演版なので一部が変わってはいるが、筋に違いはない。笑いがイマイチ取れていない点も共通している。そういうところは再演版で改定しといてほしかったなあ。
何気なく『平成教育予備校』を見てたんだけど、ゲストが『容疑者室井慎次』の柳葉敏郎、佐野史郎、八嶋智人。これがまた、みんなからきし問題が解けない。柳葉敏郎がましなくらいで、意外なことに佐野史郎がてんでダメである。 けれどこれは、別に佐野史郎が馬鹿だってわけではなくて、やはり「スタジオで解く」緊張感が焦りを誘発しているせいだろう。「一分以内に解け」というのはかなりのプレッシャーである。 入試問題なんてのは、中学レベルならどんな進学校であっても、落ちついてさえいれば、誰にでも解ける。例えば、今日出た国語の問題で、「上と下の漢字を入れ替えると意味が変わる二文字」、ということで、「生まれ持った能力」「つつましくすること」というヒントがそれぞれに出されるのだが、答えは「素質」と「質素」である。この二つの漢字を知らない大人は多分殆どいないだろうが、いざ解答させようとするとなぜか思いつかなくなってしまうのである。だから実際、入試ってのは知識よりも「度胸」の方が必要になってくるのだ。 威張るわけではないが、この手のクイズ番組は、私はたいてい満点を取る(だって、所詮は中学入試の問題だからね)。今回も全問正解したのだが、多分、スタジオで解答させたら、一、二問は間違えていただろう。それくらい、「入試」などのプレッシャーは大きいのである。
夜、キャナルシティのAMCで『魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁』&『劇場版 仮面ライダーヒビキ(響鬼)と7人の戦鬼』。 レイトショーを選んだので、劇場内に親子連れは一、二組しかいない。つか、こんな夜に小学生を連れてくるな馬鹿親。後はカップルが私たちも入れて二、三組、それ以外の数十人は全員、見てすぐに分かるオタクである。男五人くらいで来てるやつもいた。しかもみんなメガネ。彼女作れよお前ら(涙)。
『マジレンジャー』の方は、もう見所は「魁と山崎さんのおっかけっこ」と、「曽我町子」に尽きる。 『スターウォーズ』の「草むらゴロゴロ」は許せないのに、『マジレンジャー』なら許せてしまうのは、やはりドラマのレベルが格段にこっちの方が上だからであろう(笑)。ついでに言えば、殺陣も段違いにいいしな。ライトセーバーなんて結局、最後までただの光る棒をフラフラ振り回してるだけだったじゃねえかよ。カット割りもジョージ・ルーカスは戦隊シリーズを見て研究すべきだ。断言するが、アクション・シーンでのスピード感、スローモーションの適切な使い方、戦隊シリーズは黒澤明、サム・ペキンパー並に上手いんだぞ。 曽我町子は「天空大聖者マジエル」の役であるが、事前に出演するなんて情報、一切知らなかったのに、リンが「マジエル様に報告しなければ」と言った途端に「曽我町子かな?」とカンが働いて当たってしまった。一瞬、「オレってエスパー?」とか思ったが、考えてみれば、「魔法モノ」で「大ボス(今回は善玉だけど)」と来れば、曽我さんを連想しても全然おかしくないのである。アバクラタラリンクラクラマカシン。
『ヒビキ』は劇場版もやっぱり井上敏樹脚本であるが、これも「戦国もの」ということで、半可通なオタクがあっちこっちのサイトで「時代考証がなっとらん!」と馬鹿な文句を付けまくっていた。 ……だから『ヒビキ』に時代考証を求めてどうするよ。もともと「鬼」の設定自体が時代考証無視してるだろうが。各地の鬼が野球チームになぞらえてあったからってそれがどうした。「実は世間では知られていなかったが、名古屋には戦国以前から金のシャチホコ伝説があったんだろう」と突っ込んで笑ってやればいいじゃんか。少なくとも怒ることはないんだが、『ヒビキ』ファンも、『ハガレン』ファンと同じく、腐女子化しているから、とうに常軌を逸してしまっているのである。 ついでに言っておけば、「博多」の場合、この地名は平野が鳥の羽のように広がっているから「羽形」と言ったのが語源であるという説がある。やや牽強付会な点はあるが、博多の土地が古代から南側の山の上から見て「鳥の羽の形」だと認識されていたのは事実だ。博多に「ダイエーホークス(現ソフトバンク)」が来たのは全くの「偶然」であるが、少なくとも「ハバタキ」は伝説の博多の鬼として全く違和感がない。こういう符合もあるんだから、あまり時代考証を四の五の言うもんじゃないんだよ。井上脚本ってだけで、批判のための批判をしてるとしか、一般人には見られないよ。「これだからオタクは」とまた言われたいんかね。
そういうどうでもいい難癖を気にせずに見れば、これは見所満載の映画である。もちろん、マトモな映画を期待して見るんじゃなくて、「ヘン」なところを楽しむためのものだ。
最初は物語の舞台はまだ現代。明日夢君が既にヒビキの弟子になっているのにまずビックリ。多分、テレビシリーズの後日談、という設定なのだろう。これまで戦ってきた魔化魍の中でも最大級と言える「オロチ」との戦いで、ヒビキは傷つき、病院に運ばれる。自分の無力を恥じた明日夢君、オロチの攻略法はないものかと古文書を紐解く。そこに「明日夢」の文字を見つけ、自分と同じ名前を持つ少年が戦国時代にもいたことを知り、その符合に明日夢は驚く。ここから物語は、「オロチ退治に関わった七人の戦鬼」の物語にスライドしていくのだ。 ご覧の通り、物語の設定自体が「偶然の一致」から始まっているのである。時代考証を云々することがいかに下らないかがこの点でも分かる。まあ、ツッコミを入れるとすれば、「オロチのいけにえにされる村の娘を守るために、七人の鬼を集める」という設定が、「『日本誕生』+『七人の侍』かよ」とありふれすぎている点であるが、これも集まってくる鬼たちのユニークさ、おかしさに、まるで気にならなくなる。 いちいち全員は紹介してられないが、私がツボにハマッたのは、なぜか鬼のくせに戦国大名になってしまっているイブキ。オロチ退治に誘われた途端に「殿様飽きた」とまた普通の鬼に戻ってしまういい加減さとか、鬼ってこの時代サベツされてるはずなのにどうして殿様になれたんだよとか、そういう不自然さにも増して、異様に長いチョンマゲに脱帽である。しりあがり寿かい。腰元相手に「鬼さんこちら」をしてくれるのもいいんだよなあ。これぞ時代劇の醍醐味(って、有名なのは殿様よりも大石内蔵助の方だが)。
これ以上、中身を書くとネタバレ過ぎるから控えるけれども、このあとも「なんでそうなるの?」「そりゃないだろ」ないい加減でご都合主義で中途半端でトホホな展開が怒涛のごとく観客を翻弄するのである。それを「つまらない」と言うなら、テレビの『響鬼』本編だって「下らない」と言わなければ平仄が合うまい。テレビと違って一切の感動要素がない分、テンポは実にいい。井上脚本が基本的に薄っぺらなドラマしか書けないことは認めるが、そもそも『響鬼』に感動が必要なのか? 要するにこの話、「七人の鬼がよってたかって安倍麻美をボコる話」だと思って楽しめばいいのだ。安倍麻美嫌いは溜飲を下げなさい。
それでも納得できない『ヒビキ』信者には、当初、時代劇化に反対したというヒビキ役の細川茂樹さんがパンフで述べているこの言葉をお贈りしよう。「時代劇というより、時代を巻き戻したファンタジーというものだったので納得できたんです」。要するに「何でもあり」なのよ、『ヒビキ』の世界は。ディテールに文句付けるやつは野暮。
まあ、不満と言えば私のゴヒイキである神戸みゆきさんと秋山奈々ちゃんの出番が少ないことであるが、『ハガレン』ファンみたいに「何でマスタング大佐の出番が少ないの!」とヒス起こすような、みっともないマネはしません。出番が少なくても二人は超絶的に可愛いからいいのだ。特に奈々ちゃんのテレビシリーズ以上の健気さ、可憐さは必見。ああ、白無垢が白無垢が(笑)。
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