無責任賛歌
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2005年10月15日(土) |
温泉だ♪温泉だ♪/『ウルトラマンマックス』第16話/『野ブタ。をプロデュース』produce1 |
『みのもんたのサタデーずばッと』に森喜朗前首相が出演、今後の政局について語ってたんだけど、例の小泉チルドレンの杉村大蔵議員のことに触れて「自民党結党50周年の年にね、50年心血注いで一緒にやってきた議員さんたちとね、ああいうのが一緒にされちゃうってのはどうかとね」とかなんとか言っている。50年やろうが1年生だろうが、杉村さんと当の「失言首相」森さんとの間に人間的な格差があまりあるようには感じられないのは私だけだろうか。 みのもんたの「まさか35番目で当選するとは思ってなかったんでしょ?」という質問に「そりゃそうですよ」と即答するんだから全く真っ正直な人である。 「一般から候補を公募するってことはいいことだと思うんですよ。けどね、私も経験あるけどね、レポートだけ見て面接もしないで採用したらしいんですよ。解散選挙ってなって、とてもそんな暇なかったんだから」 えーっと、それって自ら「いい加減な選び方してた」ってこと告白してるだけで、何の言い訳にもなってないんですけど。馬鹿が馬鹿を候補に選んてだという、実に平仄が合ってる話で、杉村議員に対して「こんなのを議員にしちゃっていいのか」とか言ってる連中は、自分もかつて(そして今でも)そう言われたことをすっかり忘れてしまっているのだろう。 小泉さんがまだその手の失言をしてないのは、なんだかんだ言っても、あの人が一番、大衆意識を読むのに長けてるって人なんだろうね。いいことなのか悪いことなのかは知らんけどさ。
『ウルトラマンマックス』第16話「わたしはだあれ?」(宇宙化猫タマ・ミケ・クロ登場)。 先週に引き続き、NAKA雅MURA脚本・三池崇史監督作品。 これがまた、ギャグ編と見せかけながら、最後はきちんとヒーローもののツボを抑えた演出で、さわやかな感動を残してくれる傑作になっていたのでオドロキ。 タイトルが前作同様、『ウルトラセブン』から取られていて、「あなたはだあれ?」(フック星人登場)のモジリになっているから、やはり旧作へのオマージュとしての思いが託されているのだろう。『セブン』は小林昭二が「見知らぬ人」になって「あなたはだあれ?」と言われてしまう話だったが、今回は登場人物が全員「わたしはだあれ? ここはどこ?」となってしまう話(笑)。
宇宙から飛来した三個の隕石。その直後から、人々の記憶力が激しく低下するようになった。団地の主婦は、今、自分が何をしようとしていたのかを忘れ、キャスターは原稿の漢字が読めなくなり、犬は「お手」も「待て」も分からなくなり、九官鳥は言葉を忘れた。 加速度的に記憶喪失が蔓延する中、三体の怪獣が出現する。宇宙化け猫のタマ・ミケ・クロであった。一連の事件は怪獣が有機生命の記憶を乱す波動を撒き散らしているためであった。 DASHは戦闘機ダッシュバードで出動しようとしたが、途端に操縦の仕方を忘れてしまう。コバはミサイルを乱発して基地を破壊し、隊長もスイッチを押し間違えて戦闘機でくるくる回っている。トミオカ長官とヨシナガ教授もなぜか出撃して、くるくる回って笑っている。アンドロイドのエリー以外は、みんな役立たずだ。 あろうことかカイトまで変身の仕方を忘れて、ウルトラマンマックスに変身できない……。
前回、東京を破壊しつくしたのに対して、今回は一種の精神攻撃。 みんなが次々に記憶をなくしていく冒頭は、殆ど特撮を使わず、破壊がないにもかかわらず、短いカットをテンポよく繋いで侵略のイメージを明確に伝える描写力は実に見事。 一斉にみんなが記憶を無くしてしまうなんてアイデアはよくあるじゃないかとかいう批判もあるかもしれないけれど、要は「見せ方」なんでね。九官鳥だけがなんで人形なんだと思っていたら、これがちゃんとオチに効いてくるのも上手かった(笑)。 三体の化け猫怪獣の名前がタマ・ミケ・クロというのも人を食っていて楽しい。毎回、怪獣のネーミングはDASHがやってるんだろうが、多分、記憶力が減退していたので、いい加減な感覚で付けたのだろう(笑)。
役者さんたちのボケ演技はもう抱腹絶倒ものである。完全に記憶が消失してしまうのではなくて、中途半端に消えるので「何かをしようとしてそれが喉まで出かかってるんだけれども思い出せないもどかしさ」が笑いを誘う。 たとえば、カイトがマックスパークをどこに装着しようか迷って(それでマックスに変身しなきゃならないということは覚えているのである)、頭に付けたり、胸に付けたり、足の裏にまでくっつけようとしたりするのだ。いくらなんでもそりゃありえねーって(笑)。 ようやく「偶然」変身できたあとも、どうやってマクシウムカノンを発すればいいか分からず、変なポーズばかり取りまくる。「命!」をやってみせたのには、「お前は『命』のポーズだけは忘れんのか!」と、画面に向かって突っ込みたくなった(笑)。 しかもこの「中途半端さ」が実は後半の伏線になっていたのだから脚本の上手さをこれは賞賛しなければならないだろう。 旧ウルトラファンには、トミオカ長官が「カレーライスを食ってる最中に呼び出される」ギャグに思わずニヤリとすると思う。 これも若い人には説明が必要になるのだが、『ウルトラマン』第34話「空の贈り物」(スカイドン登場)で、ハヤタがやっぱりカレー食ってる最中に出動して、ベータカプセルと間違えてスプーンを挙げてしまうというギャグがあるのだ。 今回、黒部進さんはスプーンと間違えてカレー皿の方を挙げてしまう(笑)。当時、こういう「ギャグ編」を撮ったことについて、監督を担当した実相寺昭雄氏は、脚本家の金城哲夫氏から文句を言われたそうだが、『ウルトラQ』のころからたまにある実相寺監督や中川晴之助監督のこういうギャグ編を、視聴者の子供たちは楽しみにしていたのである。 つまり今回は「こんなウルトラもあっていいじゃない」っていう三池監督のメッセージでもあったわけだね。シリーズものってのは回を重ねるたびにどうしても動脈硬化を起こしてしまうものだから、こういうぶっ飛んだ異色エピソードがあった方がよいのである。
みんながイカレていく中、何とかマトモだったのはミズキで、完全にボケと化したヒジカタ隊長に突っ込みを入れるのだが、だからと言って役に立つわけではない。 唯一便りになるのが、アンドロイドのエリー。ミケたちの波動は、当然キカイであるエリーには効果がない。エリーは何とか事態を好転させようと孤軍奮闘を強いられるのだが、逆にそのおかげで今話は、彼女が最も魅力的に描かれたエピソードになった。 感情のないキャラクターに少しずつ感情が芽生えていく様子を描くのは定番であるが、これまでのエピソードではそれを効果的に描いていたとは言えなかった。 それが今回は、表情こそは鉄面皮の無表情なままだが、隊員たちのテイタラクに「もう戻ってこないでください」と諦観し、「ええかげんにせいや」と激怒し(誰が関西弁をインプットしたんやねん。「こんなこともあろうかと」、自分でデータ収集してたんかな)、マックスに「守りたい仲間のことだけを思い出して」と、一番大切な「心」を訴える。 これだけの「感情」を積み重ねているから、最後の「涙」と、「笑顔」が生きるのだ(この笑顔をさりげなくしか見せないのもイイよねえ)。何だか今回で一気に満島ひかりのファンになっちゃったぞ(笑)。 もっともオタクにはM男君も多いから、「クール・ビューティーにヒドいこと言われたい」という歪んだファンを狙った演出なのかもしれない(笑)。いや、よしながふみの『フラワー・オブ・ハウス』にもそんなキャラが出てきてたもので。
「中途半端な記憶喪失」という設定であるからこそ、マックスが「仲間を守る心」を思い出しても決して不自然ではない。ご都合主義にだって、その「都合」を納得させられるだけの基本設定は必要なのだ。 マックスが「新必殺技」を編み出したのも、ほかの技を思い出せずにやってのけた、やけのやんぱちの「火事場の馬鹿力」のようなものだし、一回こっきりで忘れちゃうというのも平仄が合っている。何よりその清々しさ、潔さがヒーローらしくていい。 最近の辛気臭いアニメや特撮ドラマにありがちな本当の正義はどっちにあるかとかいう余計なゴタクは必要ねえ、そんなものを考えるのは大人になってからでいいじゃないか、今、子供たちが考えなきゃならないことは、「仲間のために勇気を奮い起こす」その一つだけでいい。まるで、三池監督はそう言っているようである。しかもそれは決して子供に媚びた童心主義の産物ではないのだ。 三池監督作品がこの二作で終わるのは惜しい。ぜひとも後半シリーズでの再登板を期待したい。つーかほかの脚本家に監督、予算がねーのかもしれないけど、それでもこれくらいのものは作れよな。
日本映画専門チャンネルで録画しておいた映画『ピーマン80』を見る。 『8時だョ!全員集合』のプロデューサー、故・居作昌果の監督作で、劇場版『エースをねらえ!』の併映(つか添え物)作品だったんだけど、当時はなぜだか長編アニメに実写作品を組み合わせる形式が多かった。興行側がアニメだけじゃ売れないと見てたんだろうねえ。でも、集客力のない実写作品を付けたって、かえって足を引っ張ることにしかならないというのは、たとえば『ルパン三世カリオストロの城』に『Mr.BOO!インベーダー作戦』を付けるなんてデタラメな例のほか、枚挙に暇がない。 実際、ずうとるびの新井くんと谷隼人の怪盗モノというコンセプトは名ばかりで、ともかくドリフレベルのしょーもないギャグがだらだらと流れるばかりで、劇場でこれを見せられたら拷問でしかない。こんな珍品はその「つまらなさ」をかえって楽しむという被虐的な精神が必要になるであろう(笑)。まあなんだね、バラエティのギャグをそのまま映画に乗せてもつまんないということがわかってないんだね。一応、新井くんも頑張ってはいるのだけれど、手にパンを持って銃のように構えて「パンパンパン!」とか、ピンクレディーに「借金返して!」と迫られて、逃げるついでにブラジャーを掏ってくるとか、美女に見とれてプールに落ちるとか、ビア樽のフタを取ったら勢いよく噴出してビアホールがビールまみれになるとか、「吉野家の牛丼はいつまでも八十年なの?」とか、ここまでつまんないギャグを百連発くらいした例は、後は『金田一耕介の冒険』くらいしか私は知らない(笑)。もちろん私はこういうのが大好きである。 多彩なチョイ役ゲストは監督の人脈だろうけれど、『クイズダービー』関連の人が多かったのはちょっとした発見。竹下景子、はらたいら、篠沢教授、楳図かずおといった解答者は当然のことながら、脚本家で声優の故・井上瑤さんが顔出し出演していたのにはビックリ。昔見た時にはちっとも気がつかなかった。超珍品でビデオ化も全くされてないしテレビ放送も殆どなかったから、これを見逃したら二度と見られないだろう。まあ、普通の映画ファンはこんなの見なくてもいいもんなんだけど。 しげは途中まで見て飽きてしまいました(笑)。
そうこうしているうちに時間が迫ってきたので、父を店まで迎えに行く。 父は仕事を早上がり、六時ちょっと過ぎに二日市に向かう。いつもは三十分ちょっとで着く距離なのだけれど、渋滞に引っかかって、目的地の「大観荘」までたどり着くのに、結局まる一時間かかった。特に大野城あたりでやたら信号に引っかかってしまうのには往生した。しげが「一時間半かかるよ」と嘆いていたのも案外、間違いではなかったようだ。 でもほぼ一本道をナビされなきゃ辿りつく自信がないというのはやっぱりよくわからない。 仲居さんに部屋まで案内されて食事は七時半だと告げられる。父は「酒飲んだらあとは眠くなるから」と、先に展望風呂に入りに行く。私としげは浴衣に着替える。 記念に写真など撮るが、最近めつきり太ったしげが浴衣を着ると、まるっきり相撲取りである。 料理がじきに運ばれてきたので、父を呼びに行こうとしたら、烏の行水で上がってきた。全くせっかちなことである。 料理はそれほど高くない宿泊料のわりにはなかなか豪勢。
先付 酒煎り松茸・菊菜・水菜・菊花和え 椀 清汁仕立・甘海老巻・松葉独活・青梗菜・柚子 作り 刺身盛り合わせ・土佐醤油 八寸 青唐ちりめん山椒和え・尾倉紅葉和え・鮭生寿司・酒盗玉子・銀杏松葉刺し・公孫樹丸十 煮物 紅葉鯛吉野煮・大根・人参・キャベツ・煮豆 蒸し物 栗蒸しおこわ・しめじ・紅葉麩・三つ葉・銀餡 洋皿 牛モモの蒸し焼・山芋・秋豆・人参・くるみ・大根卸しのソース 揚げ物 帆立と舞茸俵揚げ・稲穂・アスパラ・味噌だれ 酢の物 蟹・穴子金紙巻・蕪あちゃら漬・黄味噌 お食事 白御飯・香の物 デザート フルーツとケーキ盛り合わせ
「八寸」というのが何だかよく分からなかったのだが、「本来は容器の名で、八寸(約24cm)四方の器のことで、懐石料理で2〜3品の料理を盛った酒の肴を指す」だそうである。 料理に舌鼓を打ったあと展望風呂へ。と言っても外が見えるわけではなくて、風呂の窓の向こうに山水が設えてあるのである。何と私以外にはお客さんが誰もいない。もう8時を過ぎていて時間が遅かったせいがあるのかもしれないが、温泉宿に客がいないというのはちょっと信じられない風景である。ゆったりできたのはいいのだが、お湯がいくら出しても出てこない。体を洗うのはあきらめて浸かるだけにする。
部屋に戻ると寝床が敷かれていて、父はもう高いびきだった。 テレビで『野ブタ。をプロデュース』produce1を見る。 白岩玄原作の文藝賞受賞作の連続ドラマ化ということだけれど、小説の方は未読。作者がかなり若いこともあって、あまり誉められてはいないようだが、タイトルの付け方はなかなかのもんじゃなかろうか。 ストーリーは、クラスの苛められっ子の転校生を見かねた男子二人が、何とか彼女を「プロデュース」することで勇気を持たせようってお話。と言っても、原作ではプロデュース対象の「野ブタ」の性別が男の子で、渾名どおりデブなのを、ドラマでは女の子に変更している。 原作を読んでないのに言い切っちゃうのも何なんだが、この変更はドラマとしては正解ではないだろうか。ミもフタもない言い方であるが、ビジュアルとしてデブな男の子より、ちょっと暗めだけれども実は美少女をプロデュースする方が、視聴者も一緒になって応援のしがいがあるってものである。 でも、正直、そんなに期待してなかった、というよりはアイドルを表に立てただけのキレイゴトなお話ではないかと思ってたんだが、必ずしもそう断定もできない雰囲気である。ギャグとシリアスのバランスがよくって、かなり「手応え」がいいのだ。ジェイコブズの「猿の手」(もちろん本物ではない)をモチーフに使っているアイデアも悪くない。 主役の亀梨和也くんと山下智久くんはとりあえずソツなくやってる感じだけれども、意外にもすごくよかったのが信太ならぬ信子を演じた堀北真希ちゃんだった。 『銭形舞』や『逆境ナイン』を見ていた時には、ちょっとこの子はアイドルとしても役者としても伸びていくのは苦しいかなと感じていたのだけれども、いじめられっ子たちに追いかけられ、追いつめられ、水をかけられ、突き飛ばされ、それでも助けも求められず、反抗もできず、ひたすら暗く、落ち込み、自虐の言葉を吐き続ける。 しかし、その心が安穏なはずもなく、「猿の手」を手に入れれば、呪いの言葉を唱えることになる。いじめっ子の首謀格の女の子の死を願うのだ。彼女の目はいつも垂らした前髪に見え隠れしていて表情がよく分からない。その「暗さ」が苛められの原因にもなっている。しかしその陰の向こうの目は、恐らく、憎しみの光で妖しく輝いているのだろう。そううかがわせるほどに、彼女の呪いの声は恐ろしいのだ。 しかし、彼女を支えようとする男の子二人の励ましに、やがて彼女は呪いを取り消してくれと「猿の手」に願うことになる。その時のうって変わった穏やかで優しい、慈愛の声。ああ、こんな振幅の激しい演技のできる子だったんだなあ、と思わず彼女に見入ってしまった。 この「プロデュース」が成功するかどうかは分からない。ラストの「人間の悪意との戦い」を示唆するナレーションを聞くと、「まさかバッドエンドなの?」と気に掛かりはする。けれど、最近の新番組ドラマの中でも、第一回だけの比較だとこれに一番惹かれるものを感じるのだ。ともかくイチオシ。来週も真希ちゃんがあまり苛められないことを祈りながらチャンネルを合わせることになるだろう。 あああ、録画仕掛けて来りゃよかった。
たらふく食って眠気が来たのか、私もじきに寝る。 ことにしたかったのだが、父としげのダブルイビキに挟まれて、なかなか寝付けなかったのであった。明日は早起きして九州国立博物館に行かねばならないというのに。
2002年10月15日(火) トンデモ傷つきブリッコの世界/ドラマ『鬼畜』/『辣韮の皮』2巻(阿部川キネコ)/『ななか6/17』8巻(八神健) 2001年10月15日(月) カチカチ山の……/ドラマ『着ながし奉行』 2000年10月15日(日) ステーキとモーレツとSFミステリと/『海底密室』(三雲岳斗)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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