無責任賛歌
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2005年10月16日(日) |
九州国立博物館、開館! |
昨晩、ようやく寝付けたと思ったら、真夜中にいきなりアタマにガツン、と衝撃を感じて飛び起きる。私はしげと父に挟まれて真ん中に寝ていたのだが、父が寝返りを打って、その時振り上げた拳骨で私の頭を殴ったのである。 父と一緒に寝ることなんて滅多にないことなんで、こんなに寝相が悪いとは思わなかった。仕方なく、少し離れて寝よう、としげの方に体を寄せたら、今度はそっちの方からもガツン、とやられた。しげも寝相はかなり悪いのである。 両方から殴られてはたまらない。仕方がないのでもう起きることにして、玄関先まで出て、本を読んで朝まで過ごす。起こされたのが午前三時なので、朝風呂が開く六時まで、三時間、ゆっくり本が読めた。……って、おりゃー、眠りたかったんだよ。
朝風呂でようやく展望風呂もお湯が出ている。 六時ジャストに入ったのに、一番風呂かと思ったらもう二人もどこぞの爺ちゃんが談笑していた。ものの五分もしないうちにドヤドヤとお客さんがやってくる。昨日はガラガラだったのにどうしたんだろうと思ったのだが、要するに、父と同じで、「酒飲んで寝る前に風呂に入っていた」のだろう。酒飲みの心理は分からない、というよりは温泉宿に泊まりに来て、全く飲まない私のような客の方が珍しいのだよね。 父もやってきて、「早かったな」と言うので、「寝てないよ。夕べ、殴られて起こされたから」と言ったら、「誰にや?」なんて暢気なことを言ってくれる。これだからヨッパライはなあ。 「しげは起きた?」 「まだ寝とるぞ」 しげも11時には寝てたはずだから、7時間は寝ている計算になるが、もちろんそんなのはしげにとっては「寝不足」なのである。けれど、今日行く予定の九州国立博物館は、今日が一般公開初日である。どれだけ人が集まるか見当がつかないので、早めに出かける予定なのだ。そろそろ起きてもらわなければ困る。 ちょっと早めに風呂を切り上げて、部屋に戻る。布団をとっちらかしてカニみたいに足を広げてだらしなく寝ているしげの姿がそこにあったが、これを父に見られているのだよなあ。普通、そういうのが恥ずかしくて一番早く起きてもよさそうなものだが。
ようやく起きた寝ぼけ眼のしげと父と、食堂で朝食。 鮭の切り身、海苔、明太子、温泉卵、湯豆腐ほか。朝からお腹いっぱいである。 給仕のおばさんから「今日は九国に行かれるんですか?」と聞かれたので、「ええ、そうです」と答えたら、フロントで前売券を売っている、と教えてくれた。「何百円か安くなるはずですよ」ということなので、出かける時に三人分買い求める。 「先に前売り券を買っとけば、そんなに並ばないですむと思うよ」と言うと、父は「お前が聞いてくれてよかったな」と言って笑った。でも実は私の考えは、「現地に行って行列ができていて、「こんなに並んどうとなら、もう帰ろう」と父が言い出しやしないかと、それが心配だったからである。35年前、大阪万博で月の石を見られなかった時の恨みを私はまだ忘れてはいないのだ(笑)。
フロントでは、駐車場の場所なども教えてもらった。九国の駐車場自体はバス専用で、一般の車は停められないそうだ。知らずに行ったら、門前払いを食らうところだった。まずは大宰府駅前の駐車場に停めて、それから参道を通って、天満宮を突っ切って、更に連絡トンネルを潜って行かなきゃならないらしい。駐車場からも20分かかるそうである。これは是が非でも参道でお客さんにオカネを落としていってもらおうって魂胆なんだろうか。 7時45分に出発、10分ほどで大宰府駅に到着。それから九国までは確かに20分かかった。 連絡トンネルってのも歩かなきゃならないのかと思ったのだが、これはエスカレーターと動く歩道で繋いでいた。三人で歩道に乗っていると、後ろから女の人が走ってきて、右側にいた父に向かって、「右側は空けておくものですよ!」と怒鳴った。父は一応避けはしたが、走って行った女の人の背中に「そんな決まりはないとですよ!」と怒鳴り返した。 「あれ、マスコミの人だよ」と私が言うと、「ああ、それで急いどったとか」と頷いた。歩道の横にだって道はあるのだから、急ぐのならそこを走ればいいのに、わざわざトシヨリをどかしてまで先に行きたがるような非常識な(しかも開場一時間も前に)人間なんて、マスコミの人間以外にいるわきゃないのである(案の定、あとで、場内で取材してる姿を見かけた)。 博物館に到着してみると、開館までにはまだ一時間以上あるのに、既に50人ほどが並んでいた。先頭は小学生の三人組である。父がそれを見て「あれはヤラセやな。誰が小学生で博物館とかに興味があるもんか」と決め付ける。その可能性もないわけではないが、小学生でも美術品とかに興味のある子供がいてもおかしかないと思うけどね。
しげがすっかり退屈して、かと言って父がいる手前、「帰ろう」とも言い出せずにぐったりして来たころにようやく開場。まずは三階の開館記念特別展示「美の国 日本」展に行く。オープニングセレモニーで、あちらこちらのお偉いさんが10人ほど、寄ってたかってテープカット。例の三人組の坊ちゃんたちが「一番乗り」ということでインタビューされて中に入ったあと、ようやく入れてもらえる。 なんたって何百点という展示物があるのだから、内容を詳しく書いているとキリがない。ごくかいつまんで紹介することにする。 二部構成に分かれた第一部は「アジア古代王朝の精華」。正倉院の御物や「漢委奴國王」の金印も見られる。近年発見された、阿部仲麻呂と同時期に唐に渡って客死した日本人「井真成」の墓誌もある。このくらいの漢文なら何とか読めるなあと一所懸命読んでいたら、隣に現代語訳の説明の看板が立っていたのであった(笑)。 第二部は「大航海時代の日本」。 室町・安土桃山時代の屏風絵や武士の兜・鎧・具足、また武士たちの肖像画など。父はやはり道具箱に描かれた山水や、屏風絵の風俗、花鳥風月などに興味を惹かれている。私の祖父は沈金師で、父は本当はその跡を継ぎたかったのだがそれを果たせなかった思いが、今でもこういう工芸品、美術品への憧れと拘りを抱かせているのである。 「お前の爺ちゃんはこういう展覧会があると必ず来て、絵を見て行きよったもんなあ。それで家に帰ったら、早速、絵を描いてみるとやけど、それが真似にならんで、ちゃんと爺ちゃんの絵になるとたい」 「爺ちゃんの絵は凄かったもん。ここにある絵のいくつかには負けとらんよ」 「跡ば継いだお前の伯父さんは十年しか続かんやったもんなあ。伯父さんには爺ちゃんのような格調はなかったけん」 身贔屓でなく、祖父の絵は、そして家具・調度に刻まれた金箔の鷹や、虎や、山水は、魂を与えられ、生きて動き出すかのような迫力と精気と、獰猛と慈愛とに満ちていた。残念ながらその血は父と私に伝わってはくれなかったようだが。
客はどんどん増えてきていて、一つの展示物をじっくり見ようにもどんどん押されていくような感じになる。最後の展示は信長や秀吉ほかの戦国武将たちの肖像画だったが、立ち止まっているとこちらの方が迷惑をかけているような感じになる。予定より早めに次の会場に移ったが、それでも一時間以上は経っていた。 四階の「文化交流展示室」。旧石器時代から近世までの美術品、博物資料の数々を展示している。 でもその中で一番印象に残ったのは、出入り口にあった「水城のジオラマ」の中に、誰がイタズラしたのか、「トラクターのミニチュア」が置かれてあったことだ。ガラスケースの中に密閉されているから、やったのは関係者以外にはいない。楽しいことをする人もいるものだが、誰かが気が付いて撤去しないかどうかが心配である。九国に行かる方は御早めに。どこにそれがあるか探してみるのも一興だろう。 世界地図を見て、地名が全て漢字で書いてあるので、学生さんらしき人二人が一所懸命解読しようとするのだが歯が立たない。「……てい・あ? どこだこれ?」なんて言っている。「あのね、それはね、『応帝亜』と書いて『インディア』と読むんだよ」とよっぽど言ってやろうかと思ったけどやめた。だって「分かった、メキシコだ!」とか言いやがるんだもん。
このころになると、しげは疲れ果てて会場内の椅子に座りこんでいる。そろそろ退散しないと辛かろうな、と思って、蒔絵の壷に勝手に触って係員さんからたしなめられている父を見つけて、一階まで降りる。沖ノ島の映画もシアターで上映していたのだが、人も何十人も並んでいたし、それは涙を飲んであきらめる。これは次回のお楽しみ、ということにしておこう。 一階は「あじっぱ」という体験ゾーン。世界各国のパズルをやったり、ドラを鳴らしたり、壷に触ってみたり、民族衣装に着替えたりすることができる。お子さん連れのお客さんは、子供をここで遊ばせておいて、自分は会場を見て回れる、というそういうコンセプトだろうか。 ここで偶然、職場の同僚がボランティアで働いているのを見つけて驚く。軽く挨拶を交わしたが、休日もこうして働いているとは、この方、いったいいつ休んでいるのだろうか。
会場を出て天満宮にお参り。そのあと参道の蕎麦屋で蕎麦と梅が枝餅を食べて帰る。 父は天神に用事があるというので、帰りはちょっと遠回り。「三越で北海道物産展があるって言うけん、覗いてみる」ということなので、三越前で父を降ろして帰宅。 ところが、じきに父から電話が入ってきた。 「物産展があると思うとったのは勘違いやった。家に帰って片付けしよったばってん、やる気が失せたけん、一緒に食事せんや」。 奢られ飯は遠慮しない。ダイヤモンドシティのパンのバイキングの店でたらふくパンを食った。 帰宅して、録画しといたアニメや特撮を見るが、そこまで感想書いてたら時間がいくらあっても足りないのでもうホントに簡単にヒトコトだけ。。 『BLOOD+』第2話「魔法の言葉」。 普通のアニメなんだけど、I.Gが作ったと思うとクオリティが低いように感じてしまう。 『仮面ライダー響鬼』三十六之巻「飢える朱鬼」 あきらはあきらのままでイメージがあまり変わってない。よかったよかった。 『おジャ魔女どれみ な・い・しょ』第2話「N.YのMAHO堂 〜ももこのないしょ〜」 メアリーはアメリカのたまきさん♪ 『地獄少女』第2話「魅入られた少女」。 よくある話だけれど絵はきれい。ノトマミ、こんな声も出せるんだなあ。
2002年10月16日(水) 合宿落穂拾い・その他盛り沢山/『ナジカ電撃作戦』2巻(田代琢也) 2001年10月16日(火) ココロを濡らす雨……詩人だなあ(どこが)/『エンジェル・ハート』1巻(北条司)ほか 2000年10月16日(月) ファジー理論とエスパーとサイボーグと/アニメ『犬夜叉』『人造人間キカイダー』第一話ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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