NORI-☆
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黒い影(3)
最近の三郎は、暑さのせいか(とも思えないけど) 一日穴倉の中でじっと横になっていることが多い。 保育園の先生のアドバイスで、 コーヒーカップを半分砂に埋めて洞窟状にした「隠れ家」を 作ってやったのが、どうやらお気に召したらしい。 昼間はほとんど穴の中に寝転がっていて、 夜になるとようやく腹ばいになって出てきては、 顆粒状の「ザリガニの餌」をつまんで食べているらしい。 (「らしい」というのは、覗き込むとササッと穴に引っ込んでしまい 実際にどういう動きをしているかよく観察するひまがないため) もともと夜行性なのか、朝入れた餌が夕方も残っていることはあっても、 夜入れた餌は朝にはきれいになくなっているのが常である。 ときどき、12時くらいに覗くと、すでにきれいになっていることも あるところをみると、夜間は昼の数倍元気らしい。 とはいえ、たまにカップの下に穴を掘ってみたりする以外、 これと言った動きもなく、 威嚇のポーズもあまりとらなくなった最近の三郎を見ていると、 なんかこう、もうちょっと覇気ってもんは無いのかね、 という気がするのであった。 もちろん、こんな狭いところで飼っておきながら 文句をいう筋合いではないし、それに 元気で生きていてくれるだけでもありがたいのだけれど、 でもやっぱり、ザリガニってやつは なんか張り合いのないペットなのであった。 当初脱走を心配して鉢の上にガラスのふたを載せていたのだが、 このところあまりに無気力にしているのと、 ふたを外して覗き込むと気づかれてしまい、 自然な姿を見るチャンスがなくなってしまうため、 最近ママは故意にふたを外しておいておくことが多くなった。 そんな状態で、半月くらい経っただろうか。 保育園から帰って一休み、というところで、 リビングのテレビの前に3人してのんびり座っていると、 ふと、気配を感じた。 「ん?」と何気なくテレビの横の床の上を見ると、 黒い影がササッっと動いた。 ママが座っていたところから30センチくらいのところである。 「きゃ〜〜!!!」 飛び上がって叫ぶママの声に、サトが「どうしたっ?」と顔を上げる。 「さぶろうっ!!」 ママの指差す先に、三郎の黒い姿を見分けたサト、 「ほんとだぁ」とのんびり応じる。 しかし、三郎は「やばいっ」とばかりに素早く姿を隠した。 さて、どうしよう。捕まえて鉢に戻さなくちゃ… でも、どうやって? 急いで台所から菜ばしを持ってくる。 「三郎は?」と鋭い声でたずねると、 「そこ、プーさんの後ろ」とサト。 "プーさんのゆらりんタワー"をどかすと、 果たして三郎がじっとこちらを伺っている。 菜ばしで胴体をつかもうとすると、 すごい勢いで身をよじるので、ママは怖気づいて手を引っ込める。 ガシャっとけっこう大げさな音を立てて床の上に転がる三郎。 ひっくり返ったままで一瞬動きを止める。 (…ほう?死んだふりするわけ?(^^;)) 再び菜ばしの先が近づくと、ひっくり返ったまま ハサミを激しく振り回して抵抗する。 うーん、これは怖い。。。。 どうしようかなぁ…と見回すと、 ミッキーマウスのキャンディ缶が転がっている。 よし、と缶を拾い上げざま、仰向けの三郎をすくい上げる。 …ガシャガシャガシャッ!! 缶の中で体勢を立て直そうと暴れて、すごい金属音が響く。 やだ〜怖いっ、怒ってるぅ… 飛び出してきて噛み付きそうな勢いなので、 慌てて出窓に置かれた水替え用の赤いポリバケツに 缶ごと放り込む。 …いつもはバケツを片付けないパパに腹を立てているママも、 今日ばかりは置きっぱなしになっていたことに感謝する。 放り込まれた三郎はといえば、 缶の中で立ち上がってハサミを振り上げている。 久々に見る威嚇ポーズだ。 …はは…怒ってるよぉ…(^^;) そろそろと手を伸ばして缶を持ち上げようとすると、 敵意に満ちた目でこちらを見上げている。 「そ、そんなに怒らないでよぉ…」 急いで持ち上げてそのままポシャッと水の中に落とす。 ちょっと乱暴だが、急いでやらないとまた暴れるし… 水の中に再び立ち上がってハサミを振りかざす姿は、 確かにこの小さな鉢を飛び出してきそうな勢いがあった。 うーん…あのぐうたらぶりは、 脱走を図るためのポーズだったのか?(^^;) 惜しむらくは、脱出後、潜伏の辛抱が足りなかったのと、 逃走経路に関するビジョンがまったくなかったと言えるが、 しかし、油断していたママは十分度肝を抜かれた。 バルタン星人の親戚だけあって、 なかなかな知能犯ぶりであった。 今日からまた、しっかりふたをしよう。。。 活劇は時間にしてやく1分半。 すぐ横で自動車を転がしていたヨシキは まったく騒ぎに気が付かなかった模様である。 「びっくりしたねぇ」と誰にともなく言うと、 「ゴキブリかと思っちゃったね」とサト。 うん、確かに、一瞬ママもそう思ったよ。 だけど、あんなに大きなゴキブリがいたら、 もうママは恐ろしくてこの世に生きていけないと思う。。。。。
2001年07月10日(火)
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