詩のような 世界
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窓からこちらをのぞく
しま猫の一鳴きがスタートの合図だった
曲を作るには最高の空模様
ボイルレースのカーテンは
さらさら と揺れ
静かな雨音を運ぶ
目を閉じると
この手は鍵盤ではなく
みずみずしく艶やかな葉に触れていた
懐かしいにおい 質感
よく見れば
それは幼い子の手のひら
忘れてしまっていた と
おしえてくれた
硬直した指が
火の鳥が
遠くの鍵盤を踊りながら渡る
僕は確かに地上を望むのに
僕のものであるはずの身体は
暖かな土の中に落ちていきたがる
地の底まで伸びる根を
やさしく撫でながら
炎のダンスは永遠に終わらない
いつまでも 時を刻み続ける
どんなに強い雨にもくすぶらず
勢いを増してゆくのだろう
時々ふと
無邪気なほどの あの笑顔を
思い出させてくれる
しとしと
雨
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