どうも。
「Mさん、この前、プレゼン用に書いてくださったコピー見ました」 「はい」 「感動しました。やっぱり本職の人は凄いですねー!」 「(本職でも何でもないだけに内心ホッとしながら)はー、ありがとうございますー!」 「そうそう、あの写真に合わせて書いてくれたコピーなんですけどね、お客様がすごく気に入ってくださって」 「あーそうなんですかー、よかったですー」
「お客様には『俺が書いた』って言っちゃいました」
おまえ撲殺!!!!!!
と営業スマイルの下で拳を固めてみた、「顔で笑って心でなーいてー♪」の管理人です。こんにちは。
さて、研修を終えて営業所に配属されてからはや2週間。 30代の大台で、何もかもに行き詰まった魂の苦悶からの逃避とばかりに、阿修羅の如く書きまくっているコピーがそれなりに効果を発揮し始めたらしく、
「キャッチコピー、全部一発で通りましたよ!」 「プレゼンは落ちたけど、お客さんに褒めて貰いましたよ!」 「ウチの会社にも、こんなん書ける奴がいるのかって言われました!」
などと営業さんからは上々の評価をいただき、それだけ早速効果が出ても、1日500円生活の実情は全く変わらず。 今日も市内を一望する高層ビルの15階で、本部クリエイティブ部署曰く、
「着ると、クリエイティビティが下がる不思議な魔力を持つ」
らしい制服代わりのだっさい社名入りブルゾンを、営業事務に混じって羽織り、1日中ちまちまこらこらとコピーを書いている、けなげな人生。 しかしこの営業事務さん達、 「女が3人集まれば『姦しい』(かしましい)」
※かしましい=耳障りでうるさい。やかましい。かしがましい。 「―・く騒ぎ立てる」 (三省堂提供「大辞林」より) ・・・・・・・・・・・との喩えがあるが、数は9名、数的にもちょうど「かしましい」の3倍で、しかも7人が、「恥じらいも奥ゆかしさも適度に三十の坂でかなぐり捨てて来ました」ってな微妙なお年頃ともあれば、
職場はもう、なんかの教団の集団ヒステリーみたいな状況なんですけど?
「職場というより、女子校の休み時間みたい」
とはその中で唯一、淡々黙々と仕事をしている契約社員さん(最年長)の評であるが、営業さんが外回りに出れば、いきなり笑い、騒ぎ、叫び、喚き、歌う、踊りだすは毎日序の口。 あまり暇だと、ボクササイズは始める、ミュージカルは始める、タイタニックのポーズはする、私用でネットは使い放題、エスカレートすると、何故か乳輪を見せる(?)。・・・・・・・・・・・
死ぬのか?こいつらは黙ると死ぬ生物なのか?
営業拠点で5年間働いてきて、営業事務の生態は見慣れているつもりの私でも、ここの人たちのあまりの濃ゆさには、ちょっとドン引きだねー。 そんなアンタッチャブルな彼女たちの前に、突如ひょっこりと現れて、外回りもせず電話も取らず、そのくせ腰だけは低くて、会社の隅っこで一行文をひねり始めた私など、正体不明、興味津々の「異物」でしかなく、
もう、毎日が半分さらしもの。
先日も、仕事用の辞書を買ったので(もちろん事前に上司の許可は貰いましたよ)、出金伝票を切って貰おうと、事務さんの1人に領収書を出すと、
「きゃー!」
などとまず、殊更に奇声を上げて驚き、
「すごーい!アタシなんて、本代にこんな高いお金出した事ないわ!」 「あーあ、あたしなんて本全然読まないからなぁ、Mさんみたいな仕事、出来ないんですよねぇ」
などと、誰も何も「しろ」とも言っていないし、本を読んだからって求人コピーが書けるとも思わないのだが、そういう私の内心のつっこみはお構いなしで、いきなり謙遜めいた自虐に入る。 この事務さんは、営業さんに頼まれて私が入稿用のコピーを出すたび、
「やーん、すぅーごぉーい!」 「こんな仕事、アタシだったらできなぁーい!」
と言ってくれるのであるが、毎回毎回連発されると単なる社交辞令かそうでないのか分からず、辞書の件も、本心から無邪気に言っているのか、経費を使った事に対する厭味なのか、全く分からない。 第一、私は今の自分が、
「コピーを書けている」
とは、間違っても思っていないのであるよ。 この仕事をいつまでやるかはまったくもって未定だが、これもまた職人の道で、書き始めて2週間で極められれば、コピーライターの専門学校や実務経験なんぞ要らないのである。 私とて、長文書きの経験はあってもコピーライティングは全く手探りなので、 そりゃ、素人目にはわからないだろうが、きちっとした制作会社で実務経験を積んできた本物のプロには、的を外して見えたり、たぶん噴飯モノな代物も沢山書いているだろう。 が、それはそれとしても、こういう、賞賛の影に自虐と嫉妬を込めているような相手の前で、
「そうですね」
と、迂闊な相づちを打ってはいけないのであるが。 だいたいね、あたしゃ、たとえ自分に向いていない事務仕事とわかってても、正社員のあんたの方が羨ましいよ。 隣の席に座る別の事務さんは、人の作業中のパソコン画面に書かれたコピーを5分に1回はチラチラ盗み見ては、そのくせ私と話すときは、敬語と明らかな営業スマイルを使って、どう見ても他の人を相手にしている時と態度が違う。 また別の事務さんはコピーを持っていくと、
「ひょー」と奇声を上げる。
・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・猿か?
毎日毎日「私のコピー考えてよ!」「私のコピー考えてよ!」としつこい彼女に、
「じゃあ『猿の惑星人、降臨』はどう?」
と、心のままに浮かんだ魂の一行詩も言えず、うっかり書き損じの紙でも自分の机の上に置こうものなら、いつの間にかすすすとすり寄ってきて、人の横で臆面もなくじろじろ見ている。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・_| ̄|○・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・悪気はないのは分かるが。・・・・・・・・・・ 人が嫌がることと、そうでない事の見分けはつこうよ。・・・・・・・・・・・ といっても、
「電話とかは私たちに任せて、Mさんは、ただ1本でも多くコピーを書くことに集中してください!」 「お弁当も好きなときに食べてください!」
などと(全く言葉に行動が伴っていないが)言ってくださっている以上、向こうに仕事を妨害する気があるわけでもなさそうで、
「いちいち気にしたら負け」
というわけで、逆に反応してしまえば向こうも反応するだろうし、私は今まで通り表向きはニコニコしながら、とにかく仕事に打ち込んでコピーをひねっていればいいのであろう。 しかし、一応、専門職という事にして貰えているから、1日中ほとんど輪に参加しないで仕事に没頭していても、まだ見逃して貰えているが、これが営業事務だと、彼女たちと同じ思考回路とテンションを要求される訳で、かなりしんどかろうなー。 しかも女が集まる職場には、この「うるさい」の他に、必ずといっていいほどもう1つの条件「暗闘」がつきまとうものだが、どうやらこの職場も例外なく、
「内勤事務」VS「女営業」 「大人しい派」VS「うるさい派」
などとお約束の戦いがあるらしく、最もあな恐ろしいのは、吹けば飛ぶようなアルバイトであるこの私までもが、いつの間にかその暗闘に巻き込まれ掛かっている事である。
・・・・・・・・・・・。
あの、・・・・・・・・・女営業さんと、そのパートナーである契約社員さん。・・・・・・・ コピー褒めてくれたり、仕事リピートしてくれたあなた方の事は好きですが、飲み会の後、私に、営業事務の○○さんの悪口言われても。・・・・・・・・・
「他の営業所はそんな事ないんだけど、ここの営業事務って、うるさすぎるでしょう?」 「営業の間で問題になっていて、近々人を分散させる目的で、あの中から何人か他の営業所に異動させられるのよねえ」 「あ、Mさんならわかってくれると思ったから話したけど、ここだけの話にしといてね♪」
・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・_| ̄|○・・・・・・・・・・・・・。
そんな重大な事、打ち明けないでほしかった。・・・・・・・・・・・(泣)
いやあ、女は怖い。
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