綿霧岩
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はじめは「く」はまっすぐでした。
長い間、まっすぐでした。
あるとき、「く」は思いました。 「つまらない。」 まっすぐであることが、つまらないと思ったのです。
そのときから、「く」は曲がることを始めました。 少しずつ、少しずつ。
兎に角長い間まっすぐだったので、「く」にとって曲がることは、とても難しいことでした。
「く」から始まる言葉は 「くうき」「くつ」「くし」「くろう」「くき」「くるま」「くま」「くんだりーに」「くち」 などがあります。
あるとき、「く」は疲れていたせいか、勢い余って思いっきり曲がってしまいました。 すると、なんと「く」はまたまっすぐになってしまったのです。 「なんということだ。これじゃ何もしなかったのと同じじゃないか。」
そのとき以来、「く」はとても慎重になりました。
今では立派に毎日、毎分、毎秒ごとに、そのときに最も適切な曲がり具合を細かく調整できます。
「く」に出会ったら、ちょっと気をつけて見てみてください。 少しずつ少しずつ調整しながら、曲がり続ける「く」を発見できることでしょう。 まるで、不思議な回転をする時計の針みたいに。
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