回り道のついでに
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2005年06月29日(水) ネコ2


 寒い夜だったからだろうか。
 互いにぬくもりが欲しかったのかもしれない。
 それで何度も熱を分け合ったのか。
 
 それとも大きい犬は見抜いたのだろうか。
 ネコの正体に気付いてしまったのだろうか。
 あたしはどんなに頑張っても、犬にはなれない。
 ネコはネコのままだ。

 あたしは少しだけ後悔していた。
 一度きりにすればよかった。
 そしたらちょっと暖かい夢みたいに思えたのかも。
 犬のあの温かさに触れてしまったら、もう他の誰かじゃ温まれない。
 あの大きいからだなら、あたしの全てを包める。
 
 犬はもう、ネコに向かって吠えない。

 もうすぐ夏が来る。
 雨の匂いがするから、夏が近づいているのが分かる。
 気温が、体温と同じくらい上昇すれば、犬の温もりが要らなくなるかもしれない。
 犬もネコなんか求めなくなるかもしれない。
 あたしは大きい犬の熱を、忘れられるかもしれない。

 ネコは期待することにした。
 望んでしまうくらい、ネコの中に犬のテリトリーが広くなっていた。
 離れるのが怖くなる前に。

 犬のテリトリーに、こっそり自分の匂いをつけた。
 風が水を運び、春と大きい犬の匂いを消していった。
 
 
 


いわい |MAIL

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