回り道のついでに
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寒い夜だったからだろうか。 互いにぬくもりが欲しかったのかもしれない。 それで何度も熱を分け合ったのか。 それとも大きい犬は見抜いたのだろうか。 ネコの正体に気付いてしまったのだろうか。 あたしはどんなに頑張っても、犬にはなれない。 ネコはネコのままだ。
あたしは少しだけ後悔していた。 一度きりにすればよかった。 そしたらちょっと暖かい夢みたいに思えたのかも。 犬のあの温かさに触れてしまったら、もう他の誰かじゃ温まれない。 あの大きいからだなら、あたしの全てを包める。 犬はもう、ネコに向かって吠えない。
もうすぐ夏が来る。 雨の匂いがするから、夏が近づいているのが分かる。 気温が、体温と同じくらい上昇すれば、犬の温もりが要らなくなるかもしれない。 犬もネコなんか求めなくなるかもしれない。 あたしは大きい犬の熱を、忘れられるかもしれない。
ネコは期待することにした。 望んでしまうくらい、ネコの中に犬のテリトリーが広くなっていた。 離れるのが怖くなる前に。
犬のテリトリーに、こっそり自分の匂いをつけた。 風が水を運び、春と大きい犬の匂いを消していった。
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