永遠の半神...楢原笙子

 

 

月鏡〜はじまりのこと5〜 - 2008年07月01日(火)





どこがいいかな

遅れがちに歩くわたしを
彼は何度か振り返り
やがて訝しげに言った。

どうかした?

ちょっと・・・足が

え?痛いの?
捻挫でもした?

いえ
きっと慣れていない靴のせい

だいじょうぶ?歩ける?

彼は傍にやってきて
わたしの足元を気にしながら
手を差し出した。

だいじょうぶです

そう言いながらも
わたしは彼に手を伸ばした。
最初は遠慮がちに
けれど歩を進めるうちに
だんだんその手が頼りになった。

ちょっとそこへ座ろう

彼はわたしを縁石に伴った。

靴を脱いでご覧

足にはいくつか水膨れができて
破れて血が滲んでいるところもあった。

ああ

うわ
痛そう

迷って
随分歩いてしまって

彼がはっとしたような顔をした。

そうか・・・


いいえ大丈夫です
傷テープ持ってるし

でも本当は
その靴に再び足を入れたくなかった。
脱いだ開放感を味わっていたかった。
そんなわたしの気配が伝わったのか
彼が言った。

ちょっとここで待ってて
これ借りるよ

えっ?と思う間もなく
彼はわたしの靴を片方だけ持って
どこかへ行ってしまった。
次第に夕闇が濃くなる見知らぬ街に
わたしはぽつんと残された。











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