電車で蒲田を通るのは初めてのこと。車窓からは第一京浜が見える。 いつもはこの向こう側なのだ。高速の降り口、立体のジャンクションを今通り過ぎたところ、いつもはその下をくぐり、今は真横に見ている。 まるでモノレールみたいな遮音壁とコンクリートの慎ましやかな駅を幾つも通り過ぎる。つんと甘酸っぱい気分。 どうして甘酸っぱいのかはよく分からない。 懐かしい気分でもないのだから尚更。 でもその甘酸っぱい気持ちが時々顔を覗かせながらも気分は時に乗じて ドンドンフラットに滑らかになっていく。 重く不安に凝固するというのではなく塵芥ひとつなくフラット。 むしろ気分は軽いくらいだ。
外は雨、ギアはニュートラルで体は躍動感の極みにあるわけだ。 旅行の一番楽しい醍醐味はこのテンションに自分を持っていけるところにあるのかもしれない。色々なことは取りあえずチャラだ。
特にこうしてぼんやりと飛行機待ちに一人でいると 気持ちは粒が揃って研ぎ澄まされるけれど この感覚こそは普段はなかなか持つことの出来ない また留めることの難しい貴重で得がたい心持ちで もうそれだけで十分に収穫を実感することが出来た。
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