犬を轢きそうになった黎明、思った通りの悪夢。 宇都宮の夜明けは素晴らしかった。 淀んだ川の底に居るみたいに、空は薄紫で酸素は汚れているのに、 静かに留まった空気や曇り空の色ではない色に見惚れ、車を停める。 時間や温度は違えど、地球は夏なんだ。 梅雨をすっかり忘れた日本で、蛙はたくさん死んでしまう。 それでも螢はほとりの老木に、満開に咲いていた。 抜け落ちた魂のようなふわりで、田園の中をとんだ。
最近通っている病院は、昔、怪我に塗っていた軟膏に似た甘い匂いがする。 森の中にひっそりと存在する、まるで隔離されたような病院だ。 栗の花が降る。 副院長先生は女の人で、お話を聞いて貰えることはとても安心のできることだった。 先日、違う先生に診てもらった時にやたらと出された薬は、全くのんでいない。 風邪ひきで過呼吸の軽い発作があった。 これから風邪ひきの病院へ行ってくるのよ。 蝉が啼いてる。
今は誰も信じてない。 夜のお客さんは嘘ばかりなのを知っていた。 お酒が入った理性の死んだ男達。 それを操る女達。 それに踊る男達。 うしろで冷める女達。 日本中がゴミの埋め立て地みたいだ。 液状化で沈めばいいのよ。
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