お庭はしん、と静まりかえり、夕立ちの後の濡れた空気に、百合の甘い芳香が滲んでた。 何匹かの虫だけが声を嗄らして啼いているのを、しゃがみこんでひとり聞いた。 またまよう、自分の行く先。 うまくもまっすぐにも歩めなくて、誰かに惑わされてばかり居る。 あのひとが好きだと云うあたしは、どんな姿をしているんだろう。 あたしは相も変わらず自分のことが本当は嫌いで、悪夢のように体力の無い躯は、ふくらむ理想だけを持て余している。 誰かに護られなくても、自分のことは自分で護れると云ったのは嘘じゃない。 けれど他人は恋愛を求めて、この不様に切り刻まれた手を握り返してきた。 君じゃ駄目なんだ、と云うことも出来ず、 もがいていることを理解してくれる友達の傍に居ることが、やっぱり最終的には落ち着くのだった。
毎晩、舌から零れるほどのお薬を飲んで、そうしなきゃ眠ることの出来ないあたしを、 他から見れば異常だともみえる、その日課を、理解してくれるのだろうか。 うたた寝さえまともに出来ない。
もう零れるほどのお薬を、躯が吸収しはじめた。 ひんやりと湿った空気がいい匂いなので、窓を開けて眠ろう。 そして現実とナイトメアは続いてる。
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