⊂凍傷⊃
2006年01月20日(金)

友人が死んだのは、今日よりちょうど2ヶ月前だった。
あたしはあの子が嫌いだった。
恨んでいた。
絶縁していた。
着信もすべて無視して、いつの間にかあの子の周りには誰も居なくなっていた。
ひとり暮らしのその子の死体を見付けたのは、死んでから10日ほど経った深夜だった。
警察に届けて部屋を開けてもらい、お医者さまが死亡確認してもまだ部屋には入れてもらえない。
もう太陽は昇りはじめて、あたしたちはどうしようもなく車で静かに待機した。
ぼくはほんのひと粒の涙さえ零さず、その子の顔を見ていた。
いつかは一緒に、ニュースになるような、凄い自殺をしようと約束をしたこともあった。
彼女はもうあたしの知らないひとになりかけていた。
それぞれの自白するささいな罪など余所に、結局は男とお金に殺されたのだ。
うつ病、ノイローゼ、リストカット。
部屋の中には、アルコールに混ぜた劇薬が、泡になりこびり付いたグラスが置いてあった。
その一連のことは、脳の中でドラマのように映像になって記憶された。
死ぬまでの狂気のカウントダウンが、頭の中に流れる。
ぼくは火葬場でまんまるの頭蓋骨を見ても、泣くことはできなかった。
ただそんな1日の流れのような、ぼんやりとした午後で、
彼女を通して知り合った仲間にも、もう二度と会うこともないだろうなぁ…と思った。

ぼくはといえば、お通夜の晩、式場に宿泊させてもらっても、みんなが思い出すからと思って、隠れてお薬をのんでいた。
袖は捲れないように、注意を払った。
傷を隠すなんて慣れていない。

今年の始めには、死んだ友人の彼氏の成人祝いを、死体を見つけたみんなでした。
全員が同罪で同じバランスで笑っていた。

ひとに泣ける涙もない。
ぼくに余裕がないということだ。
もうずっと虚言ばかり。
相変わらず死にたいとばかり思って、
晴れた日には罪悪感が押し寄せる。



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由弥 [御手紙]