2012年05月26日(土) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)104 |
「苦しい、助けてほしい」 「痛い……」 ベッドに横たわる人、人、人。怪我をしているのか包帯を巻いていたり、目をつぶってうめき声をあげていたり。同じ神殿のはずなのにさっきの光景とは全く違う。 「ここは……」 「おそらく、君たちの領分かもしれないね」 わたしの予想が正しければ、ここは施療院。そして視界に映る人たちの行く末は── 「寺院は神事を扱うのは知っているだろう? 命や愛し合うもの同士を祝福したり、一方で全く反対の役割も持つ」 寺院に祀られていた二柱の妖精を思い浮かべる。ニーヴ様とリール様。ニーヴ様は全ての創造主。そしてリール様が司るのは死と再生に、裁き。 「彼はもう長くない。ニーヴの元へ旅立つのだろう。だからといって、ただ指を咥えて待っていることもできない」 「だから、私が呼び出されたんだ」 先生が真剣な声で告げた。 「知識だけではどうにもならないことがある。厳しいかもしれないが、やってみるかい?」 普段は優しげで、時には人を諭すことも多かった女医。今日の先生はいつも以上に冷静で、かつ厳しい目をしている。 頭に詰め込めるものは詰め込んできたつもりだ。もちろん、それだけでは先に進めないということもわかっている。だったら経験をつむしかないんだ。 すうっと息を吸って気持ちを落ち着けて。 「お願いします」 そう言って、頭を下げた。
過去日記
2010年05月26日(水) 委員長のゆううつ。その2−1 2006年05月26日(金) 近況 2005年05月26日(木) 下書きその2 2004年05月26日(水) SHFH12−1
|