「硝子の月」
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そしてまた考えてしまう。 聞き取れなかった彼女の言葉と「まだ時ではない」という悲しげな声―― 「大丈夫よ」 いつの間にか隣に来ていた赤い髪の少女が小声で、しかしはっきりと請け負う。驚いて彼女を見れば、赤い瞳がティオを捉え、微笑んだ。 「その時は確かに近付いてきているから。いいえ、あたし達から近付いているって言ったほうがいいわね」 その瞳はとても強くて、捉えられたほうでは視線を逸らすことが出来ない。そして次には泣きたくなるような安心感がやってきて、少年は慌てて視線をまた前に向けた。何やらばつが悪くて、何かを言いたいけれども何を言えばいいのかはわからない。 「ぴぃ」 その頬にルリハヤブサが自分の頭を擦り寄せた。
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