「硝子の月」
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2008年09月30日(火) <夕刻> 瀬生曲

 ほどなく一行は廊下の突き当たりにたどり着いた。そこには大きく重厚な樫材の扉が一つ、来訪者を出迎えていた。
 案内役の青年がその扉を二度叩く。
「失礼致します『永き者の寵を受ける御方おんかた』。アンジュ・アルティアート・クリスティン様とお連れの方々がおいでになりました」
『ご苦労だったね』
 分厚い扉を通しているとは思えない明瞭な女の声が、不思議な響きを以て応えた。
「なげー名前」
 ティオが呟くと、青年はくるりと振り向いた。
「省略しては駄目ですよ。怒られてしまいますからね」
 愛想のない少年に大真面目に注意を与える。この一行で一番それをやらかしそうな人物と見なされたのだろう。


紗月 護 |MAILHomePage

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