「硝子の月」
DiaryINDEX|past|will
彼女はゆるりと一行に視線を巡らせる。 「随分と役者がそろったものよの。アヤメ、そなたまでおるとはのう」 「ご無沙汰致しておりました」 名指しされた老王が破顔して、『永き者の寵を受ける御方』は呆れたような溜息を漏らした。 「その歳になってもまだ己の国でおとなしゅうしておれぬのか。落ち着かぬ奴よ」 「いやいや、実働はこのカサネに任せて、と思うております。此度はたまたま『建国祭』に参ったついでに『硝子の月』を追う者達に挨拶をと訪ねたところ、折良くこちらへ伺う運びとなりましたのでな。貴女にお目もじつかまつりたく罷り越してしまいましたわ」 「相変わらず調子のよい」 老人の言葉遣いこそ丁重であるが、そこにある空気は気安いものである。これもまた某国の王など目を白黒させることだろう。 そして、見た目とは年の差が逆転したような遣り取りを、誰もがすんなりと受け入れている。
|