スペイン滞在3日目の早朝。夜も明けぬうちにホテルを出発。バルセロナの空港からセビリアへと飛んだ。
私達がスペインに滞在している期間はキリスト教で言うところの復活祭の週間だった。スペインはカトリックの国で、イエスの苦難を偲び、復活を祝う『
セマナ・サンタ』というお祭りの真っ最中で、ことにセビリアは世界中から人々が集まってくるほどに『
セマナ・サンタ』が盛り上がる地域だとのこと。市民はその祭りの行列に参加したりして、1週間夕方から明け方の4時頃まで街で騒ぐのだそうな。キリスト像なんかを搭載した山車を担いで、秘密結社みたいな三角防止を被った人が行列を作るとのこと。同じスペインでもバルセロナやマドリードといった都会では盛り上がりもイマイチなのだとか。なんの下調べもなしに旅行の時期を選んだのに、なんてラッキーな巡り合わせかと思っていたらば、添乗員さんが哀しい顔で言った。
「今日、宿泊する予定のホテルが変更になりました」
祭りの賑わいに浮かれたのか、ホテル側もミスで重複予約がなされていたらしい。万事、大雑把なスペインではよくある事らしいのだけど、私達は早朝からセビリヤの街で放り出される事になった。セマナ・サンタの期間は不幸も商店は軒並み休み。飲食店や商売熱心な土産物店は空いているものの、基本的には「今週は祭りだから仕事なんかしてられないや」ってな雰囲気ムンムン。迷路のように入り組んだセビリアの中心街を添乗員さんと歩いた後、ツアーはフリータイムに突入した。
私と夫は「何を観たって珍しい訳だし、とりあえずブラブラ歩こうよ」とて、計画性もなくセビリアの街を歩くことに。石畳には昨日の祭りの残骸である、赤い蝋燭の後が点々としていて、ベンチに酔っ払ったおぢさんが寝そべっていたりした。あてもなく歩いていたらば、正装したスペイン人の行列を発見。とりあえず私達も彼らと共に並んでみることに。
行列は教会に続いていた。「信者さんじゃない人間が入るのマズイかな」と心配したが、そういう訳でもなくて、入り口で献金をして中に入った。中ではセマナ・サンタの行列に使う山車が安置されていた。丁度、日本の祇園祭で昼間に山車を公開しているのと似た感じ。ただ、セマナ・サンタと祇園祭が違うのは、セマナ・サンタは教会に参拝すると胸にその教会(教区)のシールのようなものを貼ってくれて、信者さん達はスタンプラリーのようにシールを集めて周っているようだった。私と夫もセビリアの街をうろうろ歩いてシールを集めた。
賑やかな祭りには違いないのだけれど、やはり宗教行事だなぁ……と思ったのは、イエスを掲げた山車の前で感極まって泣いている人がいる……ってことだった。私はキリスト教信者ではないけれど、厳粛な気持ちになったのは言うまでもない。宗教的な場所では信仰の有無はともかく、敬意を持って頭を垂れなければ……という意味で。
余談だが、とある教会で献金をしようとしたら「あなたは、しなくてもいいのよ」とて、優しい老婦人から背中を押されてしまった。どうやら信仰熱心な異国の子供だと思われたらしい。スペインの人達は背が高くて大人っぽいので、チビな日本人は子供に見られてしまうらしい。たとえ……33歳だったとしても。
そんなこんなでスタンプラリーに熱くなった私達だったが、時間的に全てのシールを集めることはかなわず、地元のバスに乗ってツアーの集合場所まで戻って昼食を取ることにした。ここでの昼食はちょっとしたアクシデントがあったのだけど、その経緯は明日に続く……ってことで今日の旅日記これにてオシマイ。