4つの季節を重ねながら

2002年06月04日(火) 硬水での石けん洗濯 − まとめ



極端に暑い日と、極端に寒い日が交互にやってきて、少々風邪気味になりました。
健康維持に気をつけようと思っていた矢先だったので、ちょっと自分に怒っています。



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さて、去年の11月03日06日11日12月18日19日、今年の3月19日4月5日と長らくシリーズでやってきた(ほんと?(苦笑))硬水での石けん洗濯、今日はそのまとめです。

振り返って読むと途中、実験レポート風になっていた時期もありますが、生来日常生活はてきとーに送っている人間ですので、締めは簡単に。(苦笑)

純石けんを使って硬水で洗濯するコツは


1.ジェル石けんを使う

ジェル石けんとは:
市販のものでも手づくりのものでもかまいませんが、粉でない純石けんなら、ピーラー、包丁、おろし金などを使って細かくしたものに同量程度のお湯を加えて一晩置いたものです。

お湯を加えた段階で、むらなく溶けるように少しかき混ぜておけば、完全には溶けていなくても大丈夫。1度に数回分をまとめて作ります。ジェル石けんを使うのは、固形や粉末より溶けやすく、衣類や洗濯槽に溶け残りの石けんがつくような事態を防ぎやすいからです。

お湯は精製水や軟水のミネラル・ウォーターを沸かしたものにしたほうが石けんが溶けやすく、石けんカスができにくいのでよいです。高温で洗うと香りが残りにくいので、ジェル石けんを作るときに精油を加えるのは気分次第です。


2.ジェル石けんを溶かすまえに重曹を混ぜ込む

重曹は硬水の水質を変え、石けんがより泡立ちやすく、洗浄力を発揮しやすくする助剤の役割を果たします。

洗濯のときに、前日までに作っておいたジェル石けんを1回の洗濯に必要な量、取り分けて、そこに重曹を加えて軽く練り込むようにし、熱湯を加えます。この場合、熱湯はできれば精製水や軟水にしたほうがいいですが、わたしは経済的な都合で浄水器を通した水道水を使っています。

ジェル石けんに重曹を練り込むのは、お湯を加えたときにすぐ溶け、しゅわしゅわと泡が出るからです。それを洗濯物の上から直接かけます。タオルなど、柔らかく洗い上げたいものがあるときは、洗濯槽のなかにさらに重曹を加えるとよいでしょう。そして蓋を閉めて、洗濯を始めます。

この段階で使う石けん、重曹、お湯の量は何度か試して適量を掴んでください。初めのうち適量の検討がつかない場合は、とにかく多めに入れたほうがいいです。石けんと重曹は多めに入れるほうが洗い上がりが柔らかくなる気がします。

ふつう石けん洗濯は「泡が命!」なので、とにかく泡立つまで石けんを追加するのですが、ドラム式の洗濯機の場合、洗濯物が上から下に落ちるときの物理的な力を使って汚れを落とすので、泡立ちについてそれほど神経質になる必要はないかもしれません。


3.40度以上で洗う

洗濯機の温度設定は 40 度以上にしてください。asahi.com のサイトに、洗濯槽や洗濯槽の裏側についたカビを落とすには、酵素系漂白剤を使うか、40度以上のお湯で洗濯機を回すとよいと出ていたからです。

40度以下で洗う必要のあるデリケートなものは手洗いをします。わたしは温度指定30度のものを何回も40度で洗っていますが、いままでとくに問題が起きたことはありません。でも、そういう冒険はあくまで自己責任でお願いします。ウールは30度以下、絹は25度以下でできるだけ手早く手洗いを。

省エネのことを考えると、消毒する必要があるのでないかぎり、60度以上の温度で洗う必要はあまりありません。温度を上げるとダイレクトに電気代にも響きます。


4.すすぎのときは酸性のものを

すすぎのときは、クエン酸かお酢を加えます。弱アルカリ性の石けんを中和して完全に流すためです。加える量は洗濯物の量によりますが、わたしは8度のお酢 300cc 程度を基準に調整しています。

湿度が低いため、ここで精油を加えても、洗濯が終るまでは香りが残りますが、洗濯物が乾くときには香りはほとんど飛んでいます。ですが、精油を加えないと、雨の日などには少しお酢の匂いがすることがあるので、匂いが気になる人は加えたほうがよいです。



注:ジェル石けんを溶かすときの重曹、すすぎのときのお酢、のうちどちらかでも省くと、洗濯槽の裏側の手触りがいつもとはほんの少し違います。べたつくとまでは言わないけれど、なにかが流れきっていない感じ。洗濯物の洗い上がりもごわごわします。洗濯槽の裏側は1回なら問題はありませんが、そのまま続けるとカビの原因になりかねません。たまたまどちらかが切れてしまっている場合は、60度、90度など高温で洗うほうが無難です。

注2:日本でも石けんで洗濯してみましたが、日本ではとにかく泡立ちにさえ気をつけておけば、洗濯物は簡単にふわふわになりました。フランスではまだ日本のときほどふわふわな洗い上がりになったことはありません。水の硬度を考えると石けんの量をもっと増やせばもしかしたらふわふわになるのかもしれませんが、いまの状態でも合成洗剤で洗ったときよりずっと肌触りがいいので、「ふわふわ」はあまり追及していません。

注3:硬水で洗濯するための助剤としては、重曹よりほう砂のほうが水の硬度を下げるのに有効らしいのですが、吸い込むと身体に良くないらしいし、重曹よりも高いので、わたしは重曹を使っています。


以上は、わたしがいろいろ試した結果からわかったことです。
より詳しく知りたいかたは 赤星たみこさんのページ石けん百科 を参考にしてください。



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そして、石けん洗濯に必要な石けんの量についてですが。。。

子どものころを思い出すと、合成洗剤の袋ってすごく大きかったんですよね。母の買物につきあうと、洗剤を持たされた記憶があります。洗濯のときもお米のカップみたいな大きなカップで計って入れていました。

最近は技術革新が進んで、合成洗剤の嵩はとても小さくなりました。

最近の洗剤と比べると石けん洗濯に必要な石けんの量ってなんて多いんだろう、こんなに使っていてはかえって環境に良くないのではないかと考えるのは自然なことだと思います。

でも、昔はあんな量だった合成洗剤をいまの量にするためになにをするかというと、素人のわたしには、機械などで圧縮したものを粉にするとか、高分子の、つまり密度の高いものを作るように工夫するとか、あるいは少量でも汚れが落とせるようにより強力なものにするとか、といった方法しか思いつけないのです。

そしてこのような方法で嵩を減らしたのだとしたら、使う量が多い少ないという点だけで、どちらがよりエコロジーかという結論を出そうとするのは早計な気がします。


わたしが続けているのは、

洗い上がりの肌触りが好きだから、もうすっかり習慣になったので、ジェル石けんを溶かす作業や、すすぎのときにお酢を加える作業を面倒だと思わなくなったから、そして、環境にもよさそうだと思える(本当に良いかどうかは証明できないけど)から、です。



2002年06月06日(木) W杯とフランス vol.1


先週末、風邪をひいたときに、ちょっとやばい風邪の前兆だったので、落ち込んでいたのですが、日夜ユーカリとティツリーとオレンジの精油を焚いていたら、さっさと治っちゃいました。ふむ、植物の力って偉大。

ひさびさにエキナセアのティンクチャーも飲みました。


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風邪をひくまえ、「スペシャル!カンヌ!」と書いてある雑誌を買ってみたら、W杯まえにつき、日本と韓国についての特集が載っていました。

両国の関係を Brothers Enemies としていたり、従軍慰安婦問題のことを性的奴隷制度という表現で紹介していたり、結構ちゃんとわかっている人が書いたふうの記事。

(CNNとちがって、フランスの通常のメディアはアジアのニュースについては普段はとても弱いです。朝日新聞もフランスについては弱すぎなのでお互いさまかな)


そしてそんな雑誌の表紙がこれ。

           ↓ ↓ ↓




















そのなかに載っている両国の地理的位置関係を説明する地図がこれ。





下に部分拡大したものを載せておきますので、ぜひ、地図をクリックして拡大して見てください。TOKYO の位置がびみょ〜〜〜にずれている気がするのですが(笑)、他都市にお住まいのかた、あたたの住んでいる街は大丈夫ですか?(笑)




2002年06月16日(日) 金曜日には


日記の更新、すすんでなくてすみませ〜〜〜ん。

フランスは負けてしまったので、さすがに vol.3 まで書くことはないと思うけれど、「W杯とフランス」の vol.2 は書くつもりでいます。 Vol.1 よりはまじめなフランスサッカー事情になる予定。

月曜日から木曜日くらいまでちょっとばたばたしてるので、金曜日以降に更新します。

毎日来てくださってたかたにはほんとうにごめんなさい。m(_ _)m

もう少し、お待ちくださいませ。



P.S.
いまこうしているあいだにもアメリカではウッズが US オープン優勝に向けてがんばっているんだわ〜。

デル・ピエーロも好きだけど、やっぱりウッズが1番好き!(笑)



2002年06月18日(火) ようやっと − 今年初めての薔薇

30度を越す日が2日と半日続いて、ようやっと今年始めての薔薇が1輪、花を開きはじめました。

こころを洗われるような白。

去年のいまごろには数えきれないくらい咲きほこっていたのですが、今日の午後にはまだ長袖1枚では肌寒いくらいの気温に逆戻りしてしまったので、無理は言えないですね。

バラを無農薬で育てるのは、骨が折れるのですが、それでも毎年はじめの1輪を見るとバラを植えて本当によかったと思います。



写真は、朝には咲いていたものを夕暮れどきに撮ったので、だいぶ開いてしまっていますが。。。(クリックすると大きな画像が見られます)





2002年06月22日(土) ローズマリーの香り

今日はめずらしく「晴れていて、しかも暑くない日」だったので、ぼうぼうに生え広がっていたローズマリーの小枝を落としました。

小枝があまり増えると風通しが悪くなって、病気になるかもしれないし、有機栽培マークのついたドライ・ローズマリーの買い置きがもうすぐなくなりそうだったので、落とした小枝の葉を乾燥させれば、一石二鳥。

枝はどれも My Collection のハーブの写真のように小さかったのに、一通り切って、洗って、葉を落としたら、けっこうな量。

もちろん、これから乾燥させたらかさも減るわけだけれど、こんなに簡単に手に入るものをいままで買っていたんですね。

うちのローズマリーは今年で2年目なので、まだ無農薬栽培とはいえませんが(無農薬で育てて3年は経たないと、以前に浴びた農薬が残っている可能性があるのだとか)、洗って葉を落としているあいだ、ローズマリーの香りの強い香りのおかげで、気分がすっきりしました。

いまいち頭が冴えないのに、なにかやらなければならない仕事があるようなときに、ローズマリーの香りはいい刺激になります。

いまは、冬の一時帰国のときに手づくり石けんのサイトで知りあったかたからいただいたワンポイントイラストつきのかわいいさらしの布巾に包んで、涼しいところに置いてあります。

何日くらいで乾いてくれるかな?



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18日の日記にバラの写真を加えました。もしよかったらご覧ください。



2002年06月24日(月) W杯とフランス vol.2



お待たせしました。やっとやっとの「vol.2」です。なっがぁ〜いです。ごめんなさいぃ。


フランスがまだ負けていなかったころ、日本のマスコミが伝えていたほど、フランス人がサッカー好きかどうかは、わたしにとってはかなり疑問です。

そもそも、4年前フランスでW杯があったときまで、一般のフランス人からサッカーの話題なんて聞いたことがありませんでした。

年が明けてから先生が授業中に「今年はまぁ、良きにつけ悪しきにつけ、みんなW杯のことを話題にするでしょ」と言っても、ほとんどが 20代の生徒たちはみんな腑に落ちない顔。

数人で話してたときに、1人の女の子が「せっかくフランスで大会があるのだから、1度くらいスタジアムで見てみたい」と言っても、男の子たちはぜんぜん関心なさそうな顔で肩をすくめていて。

何年も前からW杯のときにフランスに来ると言っていた友人の宿を確保するために安宿街を歩き回っていたときも、バス停には「TVの、TVによる、TVのためのイベントW杯をボイコットせよ!」なんて紙が貼ってあって、「あ〜あ、なにもこんなフーリガンがいっぱい来そうなところにこんな貼紙をしなくても。。。」なんて思って見ていました。


   とにかく、流行りものが嫌いなんだなぁ〜、フランス人って


と、まだ在仏2年目だったわたしは思ったものでした。

そして、これはフランスが優勝を決めたあと知ったことだけれど、当時のフランス監督ジャケ氏はW杯開催前、各種スポーツ紙に「おめぇ〜が監督じゃあ、フランスは一生勝てねぇよっ!!」くらいのことは書かれていたらしいです。

ええ、いまトルシエ監督の後を継いで、来期以降日本の監督になるかと噂されている人物ですね。(笑)

W杯のチケットも、日本戦以外はけっこうあっさり手に入っていたらしいし。

4年前まで、フランスでサッカーがあんまり人気がなかったのは、どうやら「下層の人たちのスポーツ」という意識がかなりあったからのようです。自分は上流の人間だという意識の強い人ははっきりと「サッカーのはなしはしたくない」と言うケースもあったよう。

上流の人間でなくても、サッカーの話をするのはあまり品のいいことじゃないという意識はあったかもしれません。たしかに、フーリガンのような行為はまともな育ちの人間のやることではありませんよね。(苦笑)

サッカー選手達もほとんどが移民だったり、フランス人であっても訛り丸だしだったりして、美しいフランス語を話す選手はほとんどいません。

欧州中で騒がれるW杯がせっかくフランスで行われているにもかかわらず、一般の人たちは知らん顔。

そういった雰囲気を変えるために、シラク大統領自身が何度かフランスの応援に足を運び、彼がスタジアムで積極的に応援しているのをTVの中継で見て、多くの人たちがサッカーに対する認識を少しづつ変えていったのです。


それがまぁ〜、優勝したとたんにどこから湧いてきたのか大勢の人がシャンゼリゼに集まって、大騒ぎ。それがメディアにのって、世界中に伝えられたのでした。

そして優勝したあとは突如「俺たちは世界チャンピオンだ!うぉー!!」と言いだす”若干名”が学校内に現れて、そのたびにわたしは「優勝したのは選手達でしょ、あなたじゃないの、ね」な〜んていぢわる〜なつっこみを入れたりして。。。(苦笑)

その後突然、TVではサッカーの中継が激増。フランスリーグの試合の行方が日常生活で話題になるようになり。TVが中継するから話題になるのか、人々の話題にのぼるからTVが中継するのか、そこからはニワトリと卵の関係。

そして、W杯の優勝国は勝てないというジンクスを破って欧州選手権に勝ち、その後の国際試合でも優勝し、そのたびに「俺達は世界チャンピオンだ!うぉー!!」を聞いていると、フランスはぼろぼろの経済で完全になくしていた自信とか、自国への愛とか誇りとかといったものをサッカーを通して取り戻しているように見えました。

あのころのフランスは失業率14%、新卒者の失業率は25%でしたから、経済低迷といっても、日本とは比べ物にならない悪さ。パリ風物のカフェはがらがら、みんな家に帰ってコーヒーを飲む状態だったのです。


だから、前回のフランス大会から、今回の日韓共同開催までのあいだに、中流のフランス人がサッカーのことを話題にするのに抵抗を感じなくなったという変化はあると思います。今回ははるか彼方のアジアの国で行われるにもかかわらず、フランスでもだいぶ話題になっていました。でも、そこに「きっとまたフランスが優勝できるだろうから」っていう期待がなかったとはいえないんじゃないかな〜と思うんですね。

それに、中流の人たちはサッカーを受入れたとはいえ、上流意識の強い人たちはどうなのかなぁ?たとえば食卓でサッカーの話題をとりあげるのは大丈夫になったかもしれないけど、自分の子供がサッカーをしたいといったら反対しないのかなぁ?

そんなことを思いながら、わたしは今回のW杯の予選を見ていました。

そしたら。。。負けちゃうし。あは。(^^;;

もちろん、多くの人たちは残念がっていたけれど、平日の昼間に市役所前の巨大スクリーンをわざわざ観に行ったような熱烈なサッカーファン以外の人たちは、「残念だったね、負けちゃったね」で終りで、サッカーの結果で絶望したりなんてしないっすよ、やっぱり。

パリにはセネガル人がたくさんいるので、フランスに勝ったセネガル人がお祭り騒ぎをしても、べつに 日本の某紙で伝えられたように「パリの街で浮いている」なんてこともなかったし。その記事を書いた記者さんはきっとパリにはフランス人しか住んでいないとでも思っていたんだろうけど。


フランス代表選手達は大半が貧しい家の出身なので、彼らが移民の子どもたちや、貧しい家庭の子どもたちに与えられる夢の大きさを考えると、やっぱり勝ってほしかったな〜って思いますけどね。

サッカーがフランス人にとって決して自分たちの国への誇りを思い出させてくれるものではなくなったいま、これからがフランスで本当にサッカーが愛されるスポーツになるかどうかの正念場なのではないかな〜と思います。



2002年06月26日(水) 夏のはじまり


今週は、車のトランクに大きなバックをいくつも詰め込む人たちの姿をよく見かけました。

街中のブティックに "Soldes" の紙が貼り出され。

月刊誌は7,8月合併号を出し。

来週、さらに多くのパリジャン、パリジェンヌがパリの街から姿を消すと、夏がやってきます。



2002年06月27日(木) 一日中笑っていた日 vol.1

   今日は長〜い私的日記です。



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先週の日曜日、夜10時を過ぎて家に帰ってきて、なんだか一日中笑っていたな〜と思い出して苦笑してしまいました。

晴れているのに、雲が太陽を隠しているおかげで暑すぎない午後、4月にパーティで知りあった日本人女性のフォトグラファーさんとカフェで再会しました。

彼女が育てているシソをいただけるというので、わたしはお礼に自分で作った石けんを持っていくことになっていたのです。

カフェは窓を開けきっていたので、テラス席でもないのに風と太陽が気持ちよくて、ランチにサラダとキールを楽しみながらの交換会。

その後は、彼女の写真が載った日本の雑誌を見て。

わたしがお願いして持ってきてもらったので、見ながら遠慮なしに使ったフィルムや照明について質問して、感想を言って、彼女も丁寧に答えてくれて。

そのあとは、共通の知人の噂話、滞在許可証の更新の話、日本のクライアントとの撮影のはなし、フランスのクライアントとのはなし。

彼女はスチールのフォトグラファーで、わたしはムービーのカメラアシスタント。

彼女は日本でアシスタントをするまえ、ファッション誌で有名な出版社にいて、わたしはフランスに来るまえ、TV局にいて。どちらもそのときは社員だったわけではないけれど、それぞれ日本のマスコミの内情も少しは知っていて。

いままでずーっと「ちょっとずれているけれど似ている業界」にいたからか、在仏期間がほとんど同じくらい?だからか、とにかく話が尽きなくて。

お互いに滞在許可証のはなしに絡んで、Police で見た警察のトンデモな発言や行ない、フランスの撮影技術者のトンデモな行ない、日本人に受けるものの傾向とフランス人に受ける傾向の違い、日本とフランスのぞれぞれの業界の問題点、どんな写真 or 映画の撮影監督が好きか、などなど。

「日本でアシスタントしてると怒鳴られるんだよね〜。日本では怒鳴られることもアシスタントの仕事のうちだよね〜」なんて話題でも、お互いに暗〜く愚痴るよりも、笑って流すタイプだったからか、話をしていて楽しくて。

いままで、きちんと法律的な問題をクリアして、日本とフランスと両方のクライアントと撮影の仕事をしたことがある人とは話したことがなかったので、1つ1つの話題で「こんなにはなしが通じるなんてー!」と嬉しくて、カフェをはしごして話し続け、気がついたら夜の9時過ぎ。(笑)すっかりお酒に弱くなっているわたしは眠気に襲われてしまいました。

お互いにカメラとレンズとフィルムと照明機材を使って仕事をすることに変わりはないのです。違うのは、わたしが扱うカメラは基本的に映画なら 24 画/秒、日本の CF 向けなら 30 画/秒という高速でフィルムが回転すること、彼女は撮った写真を紙に焼くのに、わたしのほうは上映用のポジフィルムに焼くか、超高性能スキャナにかけてビデオ信号にトランスファーすること、わたしが扱うカメラは撮影中レールの上の台車やクレーンに乗せられたりしてよく動くこと、くらい。

それだけの違いでも照明などを見る視点は微妙にずれているものだからお互いに相手の話しから学べるところがいっぱい。それなのに、途中でわたしが眠さでギブアップしてしまったようなもので別れ際に、「今度家にも遊びに来てね〜」とお誘いを受けてしまいました。

わたしのほうはすっかり甘えて、今度彼女が自分で写真を引伸すときと、撮影に大型フラッシュを使うときは見学させてねとお願いして。



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   あんまり長いので明日に続きます。



2002年06月28日(金) 一日中笑っていた日 vol.2

   以下、昨日の日記の続きです。



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おかしかったのは、学校で学んだこともレンズ光学やフィルムの構造、現像の化学など、技術についてはほとんど同じような内容なのに、やっぱり微妙なところでずれていること。

彼女は写真の学校で売り込みに使うための簡易写真集の製本の仕方なんて学んでいるんです。映画やコマーシャルの撮影の技術者は売り込みに写真集なんて必要ないので、わたしはそんなことは全く知りませんでした。

逆に、わたしは映像製作の学校で、ピント送りに必要な理論について彼女よりもずっと長い時間教わっています。2年間、週に2日は関数電卓を抱えて学校に行ったくらい。映像の場合は被写体もカメラも同時に動くことがあるので、カメラマンのほかにピント係がいるのです。映像撮影のピント係はファインダーを見られませんが、スチールのカメラマンは自分でファインダーを見て、ピントを合わせることができるから、それほど計算や理論は必要ないんですね。

*わたしは学校にいたときよくピント係をやったので、デジカメのオートフォーカスがうまくいかないと、目測した距離を数値入力してピントを合わせてます。最新のカメラ相手にすごいアナログ。ははっ。(^^;;


スチールと映像に共通していた軽めの業界裏話としては。。。

日本人クライアントは基本的に光が全体にまわっている画が好きで、暗いところと明るいところがはっきりある写真はあまり受けない。日本では部屋の中央天井からの1灯照明が一般的なのに対して、フランスでは壁際からの複数灯照明が一般的だからかな?

フランスでは著作権などの扱いがしっかりしているので気持ちよく仕事ができるけれど、予算がないので、プロの仕事だというのにロケ先で友だちの家に泊まらされたりする。日本人相手の仕事だと、4つ星ホテル確定で有名レストランに行かれるけれど、著作権はなく、ギャラは仕事が終ってから通達され、しばしば値切られる (^^;;(フランスでは仕事をはじめるまえにギャラを言わないのは労働法違反。終ってから値切ったりしたら訴えられる)

著作権を持っていると、例えば雑誌のために撮ったものが本になれば、著作権料が入り、サイトで利用されればまた著作権料が入る。フランスでは基本的に日本に比べてギャラの水準が低いので、仕事をしても食べていけるだけしか稼げなかったりするけれど、仕事をしていなくても著作権料の臨時収入で食べていけたりする。日本では働くとガンともらえるけれど、仕事がない時期は食べていくのに困る。(笑) 映像のカメラマン&アシスタントには著作権料はないけれど、フランスではなぜかフリーランスで仕事をしているのに有給休暇&失業手当(1つの撮影終了翌日から失業中という登録をさせられる)の制度あり。働かなくても生きていけることには変わりなし。(笑)

いくらフランスに住んでいるからといって、日本の人相手に「あ〜、わたし、○日から×日まではバカンスなんですよね〜」とは絶対に言ってはいけない。(笑)「あ〜、その日はもうべつの企画が入っちゃってるんですよねぇ〜」と言うべし。

日本人相手に「仕事はわたしの人生の一部」などと言おうものなら、仕事をする気がないものだと誤解されるので絶対に言ってはいけない。が、大半のフランス人はそう思っている。たぶんこのあたりが日本人の作る画に切羽詰まった真面目さが見られるのに対して、フランス人が作る画に遊び心が見られることの理由。

フランスでだけ仕事をしていると、機材の扱いについては、恥ずかしくて、日本の同業者にプロとしてその仕事をしているとは言えなくなるような適当さになる。(^^;;


などなど。

どっちも一長一短で、まさに Paradise は自分のこころのなかにしか見つからない状態。(苦笑) 

NYはギャラの支払いや雇用関係についてはしっかりしているらしいけれど、表現に制限がつくことがあり。たとえばカルバン・クライン・ジーンズの広告写真で、フランス版では男女数人のモデルがジーンズだけを身につけているのに、アメリカ版ではTシャツも身につけている、など。映像はアメリカではユニオンが厳しくて入り込むのが難しいし。やっぱり Paradise は自分のこころのなかに探すことに。(笑)


フォトグラファーさんはふわふわとした柔らかい印象の女性なのに、「滞在許可証の更新のときは Police 相手に戦うよね〜。あそこに行くたびにフランス語上達しない?(苦笑)」なんて言っていたのが印象的でした。ふわふわな彼女でもやっぱり戦うんだな。



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