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■ 愛するということ
愛するということを、知らないとは思わない。 息子や、猫や、友人とも知り合いとも呼べないけれど大切な人のことを、わたしは確かに愛している。
けれど、異性を愛するということにおいて、一番近くにいる人を愛せているのかどうか、疑わしくなっている。
なんの不貞もしていない。少なくとも、どんなに調べて叩いたところで塵一つ出ないのは確かだ。
だけどわたしは、このところ、毎日のようにあの人のことを考えている。 会いたい。会いに行きたい。行くつもりはないけれど。 子どもの頃のわたしなら、電話をしてしまったかもしれない。 でもそれもしない。そんなことをしてもしかたがない。
あの人のことはよく知らない。 よく知らないまま好きになり、会えなくなって10年もたつ。 それでも、あの人にもらったものが忘れられなくて、今だってそのおかげで生きている。それだけではもちろんないけれど。
もし、10年前の知り合いが急に現れて、「あなたのおかげで生きてこられた」なんて言ったらわたしはとても引くだろう。あの人だってそれは同じだ。そんなことをする気はない。それでも、いつか会いたいなという気持ちは消せそうにない。
そういうのがきっと、伝わっているんだろう。 動物的な何かで。だから、あんなに怒ったのだろう。 何処へも行かない。不貞をする気は無い、けれど。 あの人への気持ちに、もしも色や形があるならば、とても透き通ってまっすぐな水晶のような、美しいものだと思う。
そして、それを目にしたら、誰も決してわたしを許してくれないだろう。
2018年10月15日(月)
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