「麗香さんはね。自分を癒す方法を覚えた方が良いですよ。」
薄暗がりの中、体温のあるものに包まれながらそう言われたのは、 いつの話だったか。
ゆらゆらと揺れていた。 けれど、しっかりと抱かれていた。 受け止められていた私は心地良かった。
あれから何年経っただろう。 私は果たして自分の癒し方を学んだのであろうか。
補ったり、補われたり 与えたり、与えられたり 差し伸べたり、差し伸べられたり。
そういうものだと思っていたのだけれど、違うのだろうか。 気がつけば、どうやら癒すばかりの感覚しか持てていない自分がいる。 実は、癒されていることに気が付いていないだけなのか。 溢れるほどの癒しに囲まれているあまり、それらを当たり前と 感じてしまうほど、鈍感になってしまっているのだろうか。 それとも本当に与えられていないのか。
そもそも、与えられるものではなく、 どこかからもぎ取って来るべきものなのだろうか。
この歳になってようやく、 他人が欲している「癒し」が何なのかは分かるようになったらしい。 が、私が欲している「癒し」とは何なのか。
数日前までの暑さが嘘のようだ。 人混みの中「ぽっかり」と透き通った秋空を、真上に見上げて思う。 彼らが私を以ってして心の中の「ぽっかり」を埋めようとしているのなら。 もしそうであるのなら。 私の中の「ぽっかり」も、いつか誰かに埋めてもらっても良いのだろうか。
空に問うたところで、答えが降りてくる訳もなし。
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