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■ グッバイ、ブラザー
すこし早い、旅立ちの季節。 弟くんが、明日ドイツに立つ。
パーティは大盛りあがりだった。たくさんの人が、忙しい中、時間を割いて 集まってくれた。弟くんに用意したサプライズ・プレゼントは、ポラ(チェキ) で撮った写真。ひとりひとりが好き勝手なポーズを取って、メッセージを書き 込んだ小さなアルバムは、思いのほか、厚みができてしまった。
幹事さんというには大袈裟すぎるが、企画は私がやらせてもらった。 午後、いろいろ写真を撮った。謎めいた空間の女子トイレ(!)や、 私たちがよく煙草を吸ったベランダ、入り口に設置されたセキュリティ装置。 設置当初、使い方がわからずよく守衛さんに助けてもらった場所だ。
どれも思い出深いものばかり。忘れないでね、というよりは、 憶えていてね、という思いを込めて、何度もシャッターを切った。
なんだかんだとこの一年、弟くんには世話になった。 もちろん世話もしたけれど、根本的な部分で、私はやはり世話をかけていた のだと思う。深夜のビリヤード場で大騒ぎしたり、夜明け近くまで与太話に 付き合ってもらったり。いつだったか、風邪で寝込んでいたとき、苺のパック を配達してもらったこともある。「しょーがねーな、ねーちゃん」と云われながら。
二次会も済み、誰かが「ラーメン喰いに行こうぜ」と提案した。 賛同したメンバーは、北風が強い夜の街へ出る。不意に両側から肩を組まれた。 左側に弟くん、右側にコザルくん。私はふたりの長身オトコに挟まれ、よろめき ながらも果敢に歩いた。「オリジナル・メンバーだよな」と、コザルくんが云う。 そう、私たち三人は、悪ガキのようにつるんで、よくじゃれていた。
ただただ楽しかった日々は、遅れてやって来た青春日記のようだった。 笑ってばかりいたような気がする。プライベートも本業も、何の関係も ない場所で、私たち三人は、笑って、寄り添って、励まし合っていたのだ。
「明日からさみしくなるなー」と、コザルくんが叫んだ。 「まったくだよぉー」と、私も叫んだ。 弟くんは、ただわらって「じゃな」と手を振った。
2004年02月26日(木)
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