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■ 小さなお客さん
数年前から、実家の庭先に「わらべかけこみの家」という、小さな看板が 掲げられている。とりたてて物騒な場所ではないのだが、民家ばかりなので 小さな子どもが登下校の際、何かあったら遠慮なく駆け込んできていいよ、 という他愛のないものだ。こんな看板が本当に役に立っているのかしらん、 と訝しがっていたところ、兄からかわいらしいメイルが届いた(以下、転写)。 ---
午後三時ごろ、玄関のチャイムが鳴った。 「はーい」と返事をして玄関に出てゆくと、小学生の男の子がふたり立っている。 「どうしたの?」と声をかけようとしたとき、ひとりの男の子が、 「すいませーん、トイレ貸してもらえますか?」と大人びた口調で言った。 僕はちょっと微笑んで「どうぞ。廊下の突き当たりだから」と彼らを家にあげた。
彼らが順番にトイレを使っている間、僕は台所でミニサイズのシュークリーム を用意する。「食べていきませんか?」と云うと、ふたりそろって「はい」と 嬉しそうに返事した。彼らは台所の椅子に座ってシュークリームを食べながら、 彼らが一年生だということ、今日が卒業式だったこと、そして、この家のチャイム を鳴らしたのは初めてじゃないことを話してくれた。
「それじゃ、はじめてここに来たのはいつ?」 「えっと、前に変なおじさんが出たとき。おばあちゃんが入れてくれて お菓子とジュースくれたの。しばらくここにいていいよ、って」 不審者か、と僕は眉をひそめる。すると大人びた口調の子の方が、 「そのときもトイレをお借りしました」と恥ずかしそうに云った。
シュークリームを食べ終えて、僕にたくさんお話をしてくれた彼らは、はっと 気づいたように「かえらなきゃ」と云った。そして、「どうもありがとうございました」 と礼儀正しく挨拶し、来たときと同じように、元気よく玄関から出て行った。
一瞬、春の風が吹き抜けていったようでした。
2004年03月15日(月)
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