きよこの日記

2005年04月09日(土) 角田光代『対岸の彼女』

ヨウちゃんからのプレゼントにビンゴ!!
久方ぶりに楽しい読書、目が離せない読書。
新学期直前の多分一年間で一番あわただしいときに読み始めてしまったが、寸暇を惜しんで読みました。

最近、人間関係の微妙なずれとか、周囲との微妙な違和感を描く小説によく出会うけど、多くの場合、なんとなく憂鬱な読後感だけのこって、「こういう小説も、まあアリなのかもね」みたいな感想を抱くのですが、この作品はそういう多くの作品とは明らかに異なる何かを持っていると読み始めてすぐに感じました。
描写が自然で、絶妙。とってつけたような文学的修辞に鼻じらむことなく、かといってそっけないという感じもない。
文体に余裕を感じます。

誰かと一緒に行動し、グループに属さないと不安な女の心理が絶妙に描かれています。
私は、子どものころは男勝りで、女の子グループからは率先してはみ出していたので、この本で世の女の子の幼少時代からの腐心と苦悩を目の当たりにできて、すごく新鮮な驚きでした。

主婦の小夜子は、大人になっても人と協調することに強迫観念を感じながらも、そういう自分にいらだちも感じている。
働き出せばすべてがうまくいく、という一念で葵という女社長の経営するベンチャー企業で働き始めるが・・・。

「彼女たちは席に着くなり、幼稚園の催し物や、担当の先生についてあれこれとせわしなく言葉を交わす。小夜子は話しに入っていけないが、そのほうが居心地がよかった。なんにも口出しせず、にこにこと相づちを打つのは楽だった。店員が飲み物を運んでくる。全員の前にすべてが並ぶまで、いっとき口を閉ざす。」


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