携帯のメモリーから連絡先を削除して半年以上がたった今日、あの人に会った。 大学のOB会。 会うかもしれないなあ、というぼんやりとした予感はあった。 そして、会ったらどう振舞えばいいんだろうと考えてフリーズ。
とにかく出かけていった。 あの人は途中であらわれた。 ああ、困ったな。気まずいな、と思ったら、向こうのほうから話しかけてきた。 ごくごく自然な感じで。 私はその調子に合わせて軽口を叩いて自然な空気を醸し出した。
やっぱりあの人のそばにいることはきっと私をこの上なく平和な気持ちにさせてくれる。
またあの人との距離を縮めたい誘惑にかられる。
だけど、こういうことは前にもあった。 あの人が大学生の頃のように自然に接してくれたから、私は大きな期待を抱いて、好きでい続けてしまった。 あの人の優しさが、友だちに対するもの以上のなにものでもないということも知らずに。
あの人は私が友だちのラインを超えないかぎり優しいだろう。 だけど、私はその優しさの中にあれば、それ以上を期待せずにいられないだろう。 だから、私はいっそあの人の優しさに触れないことを望む。
幸いなことに、今の私はあの人の優しさにすがらずとも一人で立っていられるみたいだ。 あの人と同じ空間にいて、そのことに心を支配されないでいられる。 言葉を交わさなくても、目を合わせなくても、平気でいられる。 言葉を交わすときすら、ドキドキしない私を冷静に確認できている。 あの人が帰っていく後姿を見送るために、ほかの人との会話を中断する必要はないと思える。
傷つかないためにあきらめるという選択を上手にできるようになった私。 大人になるということは、つまんないもんだね。
♪出会った日の僕らの前にはただ 美しい予感があって それを信じたまま甘い恋をしていられた そして今音も立てず忍び寄る この別れの予感を 信じたくなくて光を探している
生まれたての僕らの前にはただ 果てしなし未来があって それを信じてれば何も恐れずにいられた そして今僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を 信じたくなくて少しだけあがいてみる いつの日かこの僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を 変えてみせるとこの胸に刻みつけるよ 自分を信じたならほら未来が動き出す MR.CHILDREN『未来』
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