きよこの日記

2005年07月31日(日) 角田光代『空中庭園』

「何ごともつつみかくさず」という平和でオープンな一家は、実は誰もが秘密のないふりをしながら幸福な一家を演じているだけだった。

作者はこの一家の不調和を、一人一人が主人公になった短編を描くことで執拗にあらわにしていく。
全体に軽い文体でありながら空気は重苦しく、団地とショッピングセンター(ディスカバリー・センター)を中心とした狭い生活圏のなかで何層にも重なる物語に息苦しさすら感じる。

「どうして誰も異様だと思わないのか。学芸会じみていると思わないのか。あたしはグラスのビールを一気に飲み干す。「オーイエー」タカぴょんはいつもふつうで、だからきっと彼は、このへんさを感じ取りながら、我慢してつきあっているにちがいないと思ったが、そうではないみたいだ。この家庭内にいるかぎり、タカぴょんも相違なくへんなのだ。
 なんなのだこいつらは。全員珍妙で、おかしなくせに、なんでこうして集まるとふつうの顔をするの?これがごくごくふつうの日常で、ぼくらはごくごくふつうの家族ですって顔を。あたしはぴょん妻の手元を見る。さっきまで内臓で汚れていた指先は、白くつややかで、その手がまっすぐあたしに向かって伸ばされる。」

あんまり楽しい読書にはならないなあ。
私的には『対岸の彼女』のが好き。
同じように家族のそれぞれを主人公に一家の物語をかいた作品ならば村山由佳の『星々の舟』のが好き。


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