2005年08月01日(月) |
糸糸山秋子『袋小路の男』 |
完全に感情で読んでしまいましたので、冷静な分析など不可能ですからね。あしからず。
-指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間。 恋人でも友人でもない関係を描いた表題作---ですから。
出会ってから10年がたつあの人と私の関係に重ねずして読めましょうか。 冒頭のエピソードなど、あの日のことを見てきたかのようにそっくり似ていてびっくりです。 http://www.enpitu.ne.jp/usr7/bin/day?id=74646&pg=20020615
そして、次の部分もほんとにうなづけるのよ。
〜御堂筋線で心斎橋に出てイタリア料理屋でランチをした。ブルーチーズとトマトの入った三日月形のピザや、ジェノベーゼのソースとよくからむ平べったいパスタを食べたあと、ジェラートを食べている私にあなたは言った。 「おまえさ、俺と結婚しようとしたってだめなんだぜ」 びっくりして、あなたがなにを言っているのかわからなかった。 「そもそも俺にその気がないんだからよ」 そんなことは考えたこともなかった。なんで一年ぶりに会ってそんなことを言うんですか、と少し鼻声になって聞くと、あなたは、いや別に、と言った。私は萎縮した。目の前のエスプレッソが冷めていく。そのエスプレッソを残して私達は店を出た。試合の前に新世界で仲間と会うと言うあなたを、私は送って行かなかった。
問題は結婚なんかじゃない、この中途半端な関係をどうするかということだった。片思いが蛇の生殺しのように続いていくのがとても苦しかった。いっそのことセックスすれば全部終わりになるんじゃないかと思った。あなたのドライでクールなイメージ、あなたの付加価値はセックスをすれば消えてしまうかもしれない。あなたは、いやらしくて生々しい、どこにでもいるような男に変わるかもしれない。何度切れても、また何事もなかったかのように再開されるこのループを断ち切るためには、私があなたを嫌いになるしかなかった。その方法はもうセックスにしか残されていないように思われた。私は考えた末にメールを出した。 「小田切さん、このままじゃつらいです。最後に一度だけでいいから」そのあと迷って「一緒に寝てください」と書いた。 でも断られた。あなたは長いメールの最後にこう書いた。 「おまえと縁を切るつもりはないけれど、俺は本当にいろんなことを諦めているんだ。これで答えになるのかな」 なんない。〜
でも、当然のことながら物語は物語で私たちのことではないわけで。
私は、主人公のように素直に気持ちを伝え続けることができなかったし、傷つくことをおそれて好きでいることをやめてしまったのです。
私は今でもあの人の気持ちなんてまったくわからないのですが、この作品で小田切が恋人でもないのに主人公に思わせぶりなことをして、彼女を繋ぎとめようとするのかはよくわかります。 小田切にとって主人公は、唯一彼の孤高さを認め、あがめ、見放すことのない存在なのです。
あの人がこの本の小田切のように“袋小路”で誰からも認められず生きているならば、私の気持ちもちょっとは影響力を持ったのかもしれないのかな。
|