2005年08月04日(木) |
筒井康隆『旅のラゴス』 |
じっぽさんのブックバトンで紹介されていた『旅のラゴス』です。 http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20050628 面白くって、夢中で読んでしまいました。 湯船の中からお布団の中まで今日はどっぷり筒井康隆ワールド。
まったく物語の世界にはまり込んでしまえる面白さです。 高度な文明を喪失した後の世界を、北から南へ、そして北へ回帰するラゴスの旅の物語です。 ごく短い短編の一つ一つが主人公が立ち寄った場所でのエピソードになっていて、ページをめくっていくうちに主人公と一緒に年を重ね、旅をしているような気分になります。 そんなに重々しい文体の作品ではないし、全体でも200ページほどしかないのに、不思議な重厚感で、後半などラゴスが成し遂げてきたことの一つ一つが、まるでリアルな思い出のように感傷的に胸に迫るんです。
現実離れした世界観や、ラテン的な空気はガルシア・マルケスの『百年の孤独』と同じ匂いがしました。 そして、不思議とじっぽさんの文体とも似ていると思いました。
(とくにこのあたり) これはちょっと違うのではないか、とおれは思いはじめた。子供にもっとも精神集中力と想像力がある筈だからという判断はさほど誤っていない。しかし老人にだって集中力はあり、故郷の風景をもっとも長いあいだ眺めてきたのも老人だ。さらにまた、円陣を組むというのも好ましくなかった。そもそもかってな推測で人間をある隊列とか図形に配置するということにはなんの意味もないのだし、かえって各個人が他人への依存心を強めてしまうのだ。円陣というのもどちらかといえば保守的防御隊形であり、トリップしようという意欲を殺ぐことにもなりかねない。
自分の文体が好きな作家の文体に似るということがあるんでしょうか? 私は誰かの文体に似ていたりするのかなあ、と考えたのですが今のところ誰も思いつきません。興味深いことであります。
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