天然というのは褒め言葉らしい。 しかも、ごくごく微量な自虐的ニュアンスがあるから自分を称して天然と言ってもいやみな感じがあまりしないらしい。 だって「私って美人でしょ」という人はめったにいないけど、「私って天然でしょ」ということを言う人はけっこういる。
でも、私にとっては自称天然のほうがよほど鼻につく。 できないことを開き直ってかわいこぶっているんじゃないぞ、と。
どうも天然だとか無垢だとか、ナチュラルだとか、未分化、未発達のものをプラスイメージでとらえる傾向が日本人には強いらしい。
それがね、「さよこ先生って天然ですね」と言われたりするんです。 きっと褒めてくれているんだろうとは思うんですが、私はキッパリ否定します。 「いいえ。私の場合、天然なんてそんなかわいらしいもんじゃないですから」
世の天然信仰者は、ちょいどじを愛らしいなどと思うんだろうけど、本当の天然バカの世界を知らなくてお幸せというものです。 素でおかしなことをしてしまったり、忘れたり、人並みに仕事ができない私のような人間は、天然なんてかわいこぶっていられるレベルではないんです。 病気とか、若年性痴呆とか、発達障害とかそういう類なんです。
自分では十分注意しているつもりなのに、大切な書類を散逸してしまう。 直前に指示されたことなのにすっかり忘れてしまう。 車を運転していてうまく右折して合流できない。 計画したことの8割くらいしか達成できない。 パンツのはき方を間違える。
そういうことが当たり前に毎日あるので、私にとって一番信用できない人間は自分なんです。 抽象の世界でぼんやり考えごとして生きているならば、私も「天然でさ」なんて笑っていればいいけど、日常は具体的なことをひとつひとつこなし、積み上げていくことでしか進まない足し算の世界なんだよね。
具体的なことをしっかりと着実に計画的にこなしていける人になりたいです。
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