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■ 偽りの裏側 −8−
「アワラ、俺たちも逃げなきゃ火にのまれる!」 「そうだな」 短いやり取りをして、出口に向かう2人の前に立ちはだかった1つの影。言わずと知れた、ルヒトだ。 刑事の顔をして立っているルヒトを見て、2人は連れて来たことを今更ながらに後悔する。 「・・・理由はどうあれ、お前達のしたことは犯罪だ」 「邪魔をするなら、アンタも殺すよ」 鎮痛とも取れる表情で言うルヒトに、間髪入れずに返答したスズロは、ご丁寧にも銃口をルヒトの心臓に向ける。 2人の銃の扱いの上手さを、十分に目の当たりしたルヒトは、一瞬たじろいた。 「死に急ぐなよ」 その言葉と同時に、ルヒトの右太腿に激痛が走る。発砲したのは、アワラの方だった。 「這い出してみろよ、ココから。その脚で」 不敵な笑顔で言い放ったアワラは、言葉とルヒトを残し部屋を出て行く。 スズロは、アワラに何か言いたげだったが、結局は何も言わずにアワラの後を追う。その背中に、ルヒトは問いを投げかけた。 「・・・結局、何が偽りで、何が真実だったんだ?」 「「・・・・・全てが、偽りであり、全てが、真実だよ」」 見事に揃えられた2人の声。後に残ったのは、どこか寂しげな表情。 ルヒトは痛む脚を引き摺り、懇親の力を振り絞って1階へと上がった。脱出時を考えてか、火の手はまだ届いていない。それでも、煙は充満しており、いつルヒトの元に来るか分かったものではない。 近くの部屋に入り、窓を破って外へと脱出したルヒトの意識は、そこで途切れた。
数時間後、怪我を負っているルヒトが、”応急処置を施された状態で”警察病院の前に放置されているのが発見された。 一体誰が、と疑惑の飛ぶ中で目を覚ましたルヒトは、1つの決心をした。 『街から跡形もなく姿を消した2人組を、捕まえるまで追い続ける』と・・・。
丘の上の教会で、神父は慈愛に満ちた顔で1つの墓前に佇んでいた。その掌の中には、忌まわしき地下室の鍵。回収できなかった亡骸の代わりに、と愛しき女の髪で編まれたストラップを引き千切り、墓の中へと埋める。 (ありがとう・・・) 精一杯の感謝の気持ちを込め、今は行方の掴めぬ、鍵を渡してくれた2人の少年を思う。
「さて、これからどうする」 「そうだな、俺、死んでることになってるからな・・・家にも帰れないし」 「じゃぁ、このまま2人でどこかに行くか」 「あぁ、それは良いかもな」 「だろ!じゃぁ、決まりだ」
大切なモノ達を忘れぬよう、黒き服に身を包み
「それにしても、アワラあの刑事のこと、結構気に入ってただろう?」 「な、何だよ。藪から棒に」 「別に、助けたってことは、そう言うことかと思ってな」
追って追われて進んで行こう
「し、知らねーよ!」
邪魔なモノは薙ぎ倒す、それが俺達の生き方(やりかた) 目に見えるモノも見えないモノも 信じるのは、己の心と大切な人 手を取り合って 歩んでいこう
偽りの裏側を・・・・・・――――――
<完>
2003年11月27日(木)
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