ゼロの視点
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2009年07月02日(木) 最愛の人を失なったあと・・・

 亭主関白の、大きな赤ん坊のような夫G のことを、妻Lは甲斐甲斐しく世話をやきつづけること数十年。ずうっと二人で慎ましく暮らしてきたH夫婦に、突如、永遠の別れが訪れたのは3月の末のことだった。

 いつものように、威張っている夫が床につこうとしたところ、ベッドメークがちゃんとしてなかったとのことで、“ベッドをちゃんとしろ!”と、妻Lに命令。そして、この言葉が夫Gの最後の言葉になった。妻にきちんとしてもらったベッドに当然のように横になり、そのまま永遠の眠りについてしまったのだった。

 パリ郊外で行われたGの葬式に参列した時、私ははじめて妻のLに挨拶したのだが、その時の彼女の、落ち着きながらも、儚げな感じが強烈に印象に残っており、“この人、葬式などの義務が終わったら、どうなってしまうんだろう・・・・?!?!?!”と、わけもなく不安になったものだった。そして、結局、夫の死後から一ヶ月と3週間後、彼女は夫のところへ旅立っていった・・・・・・・。

 一方、たった今知ったのだが、友人Mの弟Fが亡くなったとのこと。Fには、今年の3月に一度だけ会ったことがあるだけの知り合いだったのだが、とにか彼の兄であり、わしら夫婦の友人であるMから、よく弟のことは話できいていただけに、突然の出来事にビックリするのみ。

 このMは3月の上旬に、 彼の自慢であり、宝であり、おそらく彼のすべてであっただろう、年下の彼女に去られてしまった。私たちが彼に会ったのは、恐らく、そのショックで相当精神的にヤバくなっていたところだったのだろうが、その時一緒に撮影した写真をみても、傍目からはそんな深い悲しみはまったくみえないほど、明るい顔をして微笑んでいる彼がいる。

 上記の残された妻となったLには、危機感を覚えたのに対して、Fに対しては“皆がいうよりたいしたことないんじゃないか?”等という気もしていたのだが、実際は、そうじゃなったようだ・・・・・。

 奇遇にも、LもFも、最愛のモノに取り残された後、何もする気にならず、徐々に食事もとらなくなり、ただただ衰弱することを望んでいたような感じだった模様。とにかく、この世になんの未練もなくなったかのように、命の灯火が消えていくのを待つ・・・・・、いわゆる緩慢なる自殺とでも表現すればいいのだろうか・・・・?。

 Fに対して、あの世にいけば最愛の夫に再会できるはずのL。発見された時の彼女は、ネグリジェ姿でソファーにきちんと座ったまま、とても穏やかな表情で亡くなっていたとのことだ。

 これらを通して、ふと現時点で思うのだが、夫に《ふとんをきちんと敷いておけ、ぼけぇ!》みたいなことを言われたあげく、ふと天国に行かれたら・・・、と想像すると、切なくなるところが妙にムカムカしてくるゼロでした。



                   聖母マリアの被昇天


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