チャリン、という金属音。瞬間的にその方向に目を光らせる。 自分の足下なら踏んで、違くてもかけよって。 金の重みは命の重み。 一円だって大事な金。 「……っしゃあ百円!」 今日もまた、百円を拾ってガッツポーズをきめる。東方は呆れた顔をしただけで、もう何も言わない。 貧しい?嗚呼何を今更そんな事を。 「つきあってられない」と先に帰り道を急ぐ東方に置いて行かれて、少しショックをうけながらも自販機のおつり受けをチェックする。 たまに残った取り残しの小銭だって、やっぱり大事な命の重みがする。 「あ」 小さく光る金属。 手を伸ばせばきっとこの指先でつかめる。 すかさず地面にはいつくばり、自販機下の五百円玉を目で捕捉する。 五百円。小銭の中で一番の大金。 逃すわけには、いかない。 そっと手を伸ばして自販機の奥の小銭を取ろうと目一杯腕を伸ばす。 あと少し。 もう少し。 ようやく小銭に触れた指の感触に感動を覚える。 そして貯金箱にこの五百円玉を入れたらどんな音がするだろうか、なんて考えながら腕をひく。 「?!」 それなのに、そんな幸せ気分をぶちこわすように腕が、抜けない。 一生懸命腕を抜こうとしても、ひっかかった腕は一センチも動いてくれない。しかも今更だけど腕に痛みが走っている。 嗚呼、神様はなんて不公平なんだろう。 そんな風に自分すらも怨めずに神を呪う火曜日午後四時三十五分。 -- 貧乏南。 この後、通りかかった跡部に缶珈琲を恵んでもらう。誤解だ、と言いはっていた南も有難うと号泣しながら跡部に感謝する。腕がぬけなくても缶珈琲はしっかりと握りしめたまま。 跡部は心底呆れてそんな南を不憫に思う。 そんな話。 ……。 ネコタサンニハカナリムリダヨー。 話してる時はいいんだけど私が文章に直すとどうにもなぁ。 ちなみに楠桂先生の漫画は好き。
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