瞬間的に、この関係を恐ろしいと思う事がある。 たとえばそれは千石が笑った時であったり、シャワーをあびているときだったり、別に何か特定の条件があるわけではない。 ただ、共通しているのはその理由だ。 いつかはこの関係も終るのだと自覚する度に、この関係を恐ろしく思うのだ。 そして依存している自分の愚かさを呪うのだ。 恐ろしい、と思う。つくづく。こんな関係。いつ終ってもおかしくないと思う。 だって、俺と千石は恋人なんていう甘ったるい関係ではないのだ。キスもセックスもしていようとも、恋人じゃない。 友達ですら、ない。 割り切っているつもりではある。けれどふとした瞬間に自覚して、恐ろしいと思うのだ。 千石といる事が幸せだと思っている自分に気付く度、なんて恐ろしい関係なのだろうか、と。 「声……聞きたくて」 千石は時たまそう言って電話をかけてくる。大概は深夜だ。 電話越しに、外の排気で汚れた冷たい空気を感じ取れるような気がする。そんな電話。 その電話で千石は必ず「声聞いてたら会いたくなった」と言って電話を切る。そしてそれから十分もしないうちに家を訪ねてくる。 そんな回りくどい事なんてしなくても良いのに、千石はいつもそうして深夜に家を訪ねてくる。薄汚れた冷たい空気を纏って。 する事は決まっている。そうして千石が訪ねてくる時は必ず身体を繋げる。ただすこし、その行為に優しさが含まれているぐらいで、行為自体はいつもと大して変わらない。 そもそも、その優しさだってただ単に極力音をたてないように気をつかっているからなのだ。 愛だとかそんなものは、この間に何もない。 -- 続かない。 オチは結局は両想いっていうか恋愛感情程度は間にあるとお互いに気付くとかそんなんの方向で。
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