ジョージ・エルスの日記...ジョージ・エルス

 

 

テン・ダラー - 2004年08月30日(月)

貨物運送の契約運転手の中国系マレー人、ミスター
・リム。70歳に近い年齢ときいている。

いつもは挨拶を交わすだけなのだが、今日は手招
きをしている。

近づいていくと、たどたどしい英語と身振り手振り
で説明しながら、真新しいテン・ダラー(10ドル)
紙幣を手渡された。

バナナの木と椰子の木が中央に描かれている。南
国らしい絵柄。なんともお気楽な風情だ。

マレーシアの昔の紙幣だろうと思ったが、よくみて
みると、英語で”日本政府”と書かれてある。

しかも”持参人に対し、10ドルの価値がある事を
約束します”と続く。下端には、ここだけ日本語で、
”大日本帝国政府”と書いてある。


おもちゃの紙幣ではない。約60年前の約3年間に
わたるマレーシア占領時、日本政府が発行した本
物の紙幣だったのだ。


現地の人は、描かれているバナナにちなみ、これを
”バナナ紙幣”と呼ぶ。当時、日本の敗戦により、
突然占領が解けて、紙幣の価値はゼロになってしま
ったらしいが。


しかし”占領”という歴史の事実は、まったく気楽
なものではない。

ミスター・リムの幼少の頃がこの時期にあたる。


大事にしまっていたのだろうか。60年前の紙幣だ
が、新品の様にきれいだった。

決して多くは語らなかったが、彼は、何かを伝えた
くて、これを手渡したのだろうか。



僕は今、戦争のないこのマレーシアで、平和な日常
を過ごしている。


明日はマレーシアの独立記念日。今晩はKLの中心
街でカウントダウンと同時にたくさんの花火があがる。

平和のありがたみを感じる事ができるだろう。


そして 日本人である僕と、中国系マレーシア人である
ミスター・リムとが共に働いてる、この何気ない日常こ
そが、平和であるいう事なのではないか、と思った。






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